The Hint Of The Storm-5
ぎしぎしいうベッド。
「あっ…擾…擾ぅ…っ。」
は、は、と、自分の息が病的に荒いのが解る。体中が熱い。同時に寒い。汗が酸のように皮膚を焼くような感覚。そして、それを無視させるほどの、強烈な衝動。
奇妙に子供っぽい部屋は、いつも薄暗いから、擾がどんな顔をしているのか見たことは無い。僕がするように息を荒げてみたこともある。声を出すことも。そして、その両方を全く行わないことも。
身体がぶつかる度に、粘液が大きな音を立てる。体中の毛が逆立ち、終焉が近づくのが解る。
「あ…だめだょ、擾…っ、もう…!」
その日は、何もいわない日だった。
大きな動きだけが、僕の哀願に応える。
「っ――!!」
自分の腹に、熱いものを感じる。そして、中に流れ込む模造品。それは擾が自分で作り出した「偽者」。その証拠に、匂いも熱さも、僕のものとは全然違う。
浅く短い息が、眠気のために次第に長くなってゆく。すくなくとも、この行為で疲弊したお陰で眠るのが簡単になった…擾は何も言わずに部屋を出た。指一本動かす気力もないまま、意識だけ硬いベッドに沈んでゆく。
これで眠れる…眠って…
「起きろ!このボケナス!!」
あわてて身を起こす。頭に衝撃が走り、電流と鳴って腕までしびれた。
「いった…」
目の前には、同じようにうずくまる夕雷。いきなり起き上がったので、お互いに頭突きをしたようだ。
「てめえ…師匠の言いつけを無視してこんな時間まで眠りこけるたあ、いい度胸じゃネエか…ええ?」
笑っている口元とは裏腹に、目は怒ってる。その目が、僕のと合って、不意に怒りが収まった。
「・・・悪い夢か?」
「え?」
その時、涼しい風が吹いて、涙の後をひんやりと撫でていった。
「あ…。」
夕雷は、僕の足元で自分の頭を乱暴にかきむしって言った。
「その…おめえが苦労したのは、オレにだってよくわかるぜ…」
そして、今日は珍しく、稽古の前に沢山言葉を交わした。