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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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The Hint Of The Storm-13

「ここまでで育ててやった恩をあだで返そうってのかァ?」

キッと睨み返す。

「育てた?違うね…あんたは僕で遊んでいただけだ。」

そう、人間の「ゲーム」みたく。レベルを上げて、「育てる」と言う名目で戦わせる。

「あんたは誰かを「育て」ることなんて出来ない。可哀想な狗族たちをいくらさらっても、いくら鍛え上げて強くしても、それは育むことじゃない!」

擾はゆっくりとこっちに近づいてくる。たじろぐもんか…一歩だってここから動いたりしない!

「教育が足りなかったようだなァ、えェ?」

「いや、十分に教えてもらったさ…いまじゃああんたの事は手に取るように解るんだ。あんたが一番手に入れたいもの。そして絶対手に入れられないもの。」

鈍く、重い一撃が、右の頬に当たった。僕は脳を揺さぶられてよろけたけど、踏みとどまった。

この澱みというものたちと一緒にいて、わかったことが有る。

―彼らが憧れているもの。

あざ笑って、そんなものはくだらないと言いながら、欲しくて欲しくてたまらないもの。



でも、彼らはどうやってそれを手に入れたらいいのか知らない。知識があっても、機能が伴わないし、それを手に入れるのに必要不可欠な要素を完全に欠いている。僕にだってまだわからないけど…多分、足りないんだ。ある感情が。



「黙れや、犲が!」

僕が継ごうとしている言葉を途切れさせようと、鞭が背中に飛んでくる。僕は防ごうとすらしなかった。確実に、この言葉を言ってやる。



「あんたは子供が欲しいんだ。」



静かな森。その木々に宿る全ての息吹に、全ての鳥たちに、全ての獣、全ての虫に聞こえるように。声を張り上げた。

「空しい憧れだね。そんなことは決して叶いはしないんだから!」

鞭を振り上げるのも忘れて、擾はそこに立ち尽くていた。目を見開いて、あたかも死の予告を聞いたかのように。僕は可笑しくって…少し笑った。

「黙れ…もう一言でも言ってみろ…。」

怒りと言う感情を取り戻した擾が、震える声で宣言した。

「…『我々は…我々自身を冷笑しないために多くのものを冷笑する』…昔の詩人の言葉だって。お前らの心情を良くあらわしてると思わないか……?」

『生』を…生み出す行為を冒涜し、嘲笑し、愛するという神聖な心を嘲り続けてきた澱み…何故だ?

自分たちには決して手に入れることが出来ないものだから。どんなに擬態しようとしてみも、かわいそうな子供を攫っても、決して達成できない高み。それを認めたくないから、やつらは狗族を、妖怪を、ひいては人間を冷笑しているんだ。


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