社外情事?〜鬱屈飲酒と意外情事〜-15
「……レ、レイさん……?」
「何かしら、誠司君?」
玲は嬉しそうな笑みで、首を傾げる。逆に誠司は、昨日の情交がフラッシュバックし、引きつった表情でその場にへなへなと座り込む。
「レイさんが……玲さんで……社長……? 俺、社長と、昨日……!?」
すると玲は、少し困ったような顔になった。
「……まさかそこまで驚くとは思わなかったわ。だけど、この程度で驚いてちゃだめよ? 本題は残ってるんだから」
『この程度』で済まさないでください――などと言う余裕は今、彼にはない。昨日悦楽を共有した相手が自分の会社の社長だったという事実に、思考がめちゃくちゃにかき乱されている。
しかし、玲はそれを知ってか知らずか、更に言葉を続けた。
「……君の職場状況は既に把握しているわ。確かに君は、君の上司にあたる課長に依願退職を強要されているに等しい状況に追い込まれているようね。だから君は大した仕事をもらえず、リストラの危機にあった」
一旦言葉を切り、誠司の肩に手を置く。そして少し強く揺すって誠司の意識をはっきりさせる。
「あ……社長?」
「……二人きりの時は、『玲』でいいわ。話を続けるわね」
その後で、玲は誠司の肩に手を置いたまま満面の笑みを浮かべた。
「でも、君は今日……正確には明日をもって、その危機から解放される」
「え……」
「それだけじゃないわ。その課長と君との繋がりは消える上に、君の経歴や君の同僚から集めた情報を元に私が吟味を重ねた、最も適する席が君には与えられる」
「……席、ですか……」
「そう。その席は……」
一拍。
「……昇進。君のいる営業部の、課長席よ」
――数拍。
「え?」
「……もう一回説明する?」
「……課長、ですか?」
「ええ、課長よ。正式な辞令は明日だけど」
「……えぇぇぇええっ?!」
――社長室に、絶叫が響き渡った。
――続く