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at office
【OL/お姉さん 官能小説】

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at office-2

昌樹には彼女がいる。美南が2年前入社したとき、歓迎会の飲みの席で同僚から聞いた。入社して間もなかった美南は大して気にしてなかったが、しばらくして昌樹に惹かれてからは、気になってしょうがない。ついこの間も展示会の決起大会と銘打って社員で飲みに行った際、盗み聞きした会話で、まだ続いていると知った。
昌樹と同僚でなければ、今すぐ気持ちを伝えたい。振られてもいい。自分の強い想いをわかってほしい。

でも昌樹は会社の同僚で、自分は昌樹の後輩だ。この2年間で昌樹からの信頼を得ているし、頼りにもされている。たまに今日のように幸せな気分にもなれる。彼女は知らない仕事中の昌樹を見ることもできる。それで充分と言い聞かせてきた。
自宅に着く頃、同僚の原から着信があった。
『もしもし?もう家?今から飲みに行くんだけど、杉下も来ない?』
「また岡崎さんとですか?行きます行きます。男二人じゃ色気ないですもんね〜。」
『杉下に色気は求めてないから。あ、怒るなよ〜。まぁいつもの店で先に飲んでるから。』

原は昌樹とプライベートでも仲良しで、昌樹に彼女がいると美南に教えてくれた人だった。二人はしょっちゅう飲みに行くようで、お気に入りの飲み屋がいくつかあるらしい。美南の家の近くへ飲みに行く時は必ず原か昌樹から呼び出しの電話があった。


飲みの席では原がおもしろおかしく話すのが定番で、美南と昌樹はいつも聞き役だ。来週の展示会の話や、会社以外のくだらない話、原の家庭の話と話題が尽きなかったが、ふとしたことから原が、そういえば杉下は彼氏いないの?と問いかけた。
美南は一瞬ドキッとしたが、そう言えば今まで何度も飲みに行ってるのに聞かれなかった方が不思議だったな、と平常心に戻った。
いませんよ、と軽く流したが、珍しく昌樹が口を挟んだ。
「へえ、意外だな。てっきり彼氏いると思ってたよ。」
「まぁ、杉下は仕事もできるし、若いし、それなりに可愛いんだから、すぐ彼氏できるさ〜くよくよするなぁ〜」
昌樹に続いて原が冗談でそんな事を言ったので、それなりってなんですか!と笑ってごまかした。
でも美南は改めて昌樹から恋愛対象外!と告げられたような気分だ。
それ以降の会話はほとんど上の空で、美南は気分が悪くなる一方だった。





そろそろ帰ろうか、と原が言い出し、原は一人で駅に向かう。いつもはそのあと別々のタクシーで帰るのだが今日は違った。
「杉下、送るよ。」
本当なら飛び上がるほど嬉しい昌樹の申し出だが、今日は勘弁してほしかった。
最悪に気持ち悪い上に、それを悟られまいと平気なふりをしていた。今日ばかりは早く昌樹と別々になりたい。
笑顔で、大丈夫です、とか言ってみても昌樹には効果がないようだった。
「ほら。」
と肩を抱かれタクシーに誘導されたら、美南はもう何も言えなかった。
ただ、気持ち悪さも泣きそうな気持ちも我慢するしかなかった。


家までたった10分程度の道のりだが、美南の気分がさらに悪くなるには充分だった。
タクシーを降りるのがやっとで、昌樹の手を借りて部屋までたどり着いた。

あぁ、最悪…。みっともないとこ見せてる。と動かない頭でぼんやり思った。
昌樹が水を運んできて、美南に飲ませる。
しばらくして、美南は少し気分がよくなった。途端に今の状況を頭が理解しだした。


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