jam! 第4話 『Hello! pretty ghost girl.』-4
―――ピシッ―――
「ッ!!」
突然体が動かなくなった。……金縛りだ。
動けない僕をよそにして、月明かりが照らす部屋にぼんやりと人影が浮かび上がる。
……長い黒髪の、赤い着物を着た少女がそこに立っていた。
「うぅらぁめぇしぃやあぁぁ〜〜」
……そんな、定番幽霊フレーズをのたまいながら。
ついでに両手も前でブラブラさせる定番幽霊ポーズ。
ちなみに、その間僕は無反応。金縛りにあっているのだから当然である。
「…一枚足りな〜いぃぃ…」
それは番長皿屋敷だろ。
……お、もう体が動くな。とりあえず金縛り解放記念に、
「うーらーめへぷッ!?」
バフッ、と側に置いてあった枕を、まだ幽霊フレーズを言い続けていた少女に投げてみた。直撃。
「なぁにすんのよっ!?普通女の子に枕投げる!?最ッ低ー!トシ君最ッ低ー!!」
「普通の女の子は人を金縛ったりしないし、いきなり『うらめしや』とか連発しない。」
「いやそこはほら、茶目っ気ってやつ?」
「やり過ぎたイタズラは茶目っ気じゃなくて嫌がらせと呼ぶ。あと『うらめしや』はちょっと古いぞ、千里」
さて、そろそろ紹介しとこうか。
このいきなり金縛りをかけてきやがった少女の名前は、千里(せんり)。
こいつはホンモノの幽霊である。ついでに先程言った二階堂さん達にまだ伝えていない身近な幽霊っていうのもコイツの事だ。
「また金縛りなんて物騒なもの覚えて……。いい加減普通に登場できないのか?」
「結構覚えるのに苦労したんだよコレ。一ヶ月くらい?」
「最近姿が見えないと思ったらそんな事してたのかお前。つーか金縛りって習得できるもんなの?」
「ま、私くらい強い幽霊ならねー。普通の幽霊には無理よ?」
確かに、さっきも霊体のくせに投げた枕がちゃんと当たるくらいに強く実体化していたから、まぁ、相当強い霊なのだろう…………多分。
千里は何か新しい力を身につける度に僕に試してくる。最初はラップ現象から始まり、ポルターガイストとかもあったような。
「そういや最近トシ君ってばタチの悪い奴にからまれてたわねぇ。アレどうなったの?」
「へ?タチの悪い奴って………………・・・」
一瞬、二階堂さんの顔が浮かんだが、すぐに別の心辺りに気付いた。
「……あ。念魔の事か?ひょっとして。というより千里、知ってたのか?」
「へー、念魔っていうんだあの黒いの。なんか命狙われてるのは知ってたけど」
「気付いてたんなら助けてくれよ!」
「いや、別にトシ君が死んでも私の仲間になるだけだから問題ないかな、と」
心の叫び、問題無いで片付けられる。合掌。
「問題だらけだ!お前だけだよ喜ぶの!」
「まぁ冗談は置いといて。ホントに危なくなったらあの程度の奴くらい余裕でブッ潰してあげたわよ」
「潰す、って……」
まぁ、助けてくれると言ったのは嬉しいのだが……。