狂人達の宴-12
帰り道
いつもなら明るいルミが、その日は落ち込んでいた。それを不思議に思った春樹は、思わず訊いた。
「ルミちゃん。何か悩みが有るの?」
ルミは驚いた表情を見せたが、やがて力無く笑うと答えた。
「私、担任の先生に嫌われてるの。今日も怒られちゃって……」
そう言ったルミの瞳は潤んでいた。それを見た春樹はひどく憤慨した。
(こんな良い子を嫌うなんて、何て教師だ!)
春樹はルミにやさしく語り掛けた。
「大丈夫だよ、ルミちゃん。ボクが守ってあげるから」
ルミの表情が一気に華やぐ。
「ホント!ハルちゃん、ありがとう!」
ルミは嬉しさのあまり、春樹の唇に自分の唇を重ねた。春樹にとって、初めてのキスだった。
翌日から、春樹のストーカー行為が始まった。
もちろんルミにでは無く、ルミの担任に対してだ。
女性教師だった。
ルミと初めて性交した後、彼女の姿を追って学校を見ていて、運動場での授業があった。
その時、教師の顔も見ていたのだ。
2週間ほどを費やして、女性教師の行動を追跡した。その結果、彼女の帰る時刻や帰宅経路、自宅を把握していた。
ある日の夜、春樹は決行した。
彼女は学校での勤務が終わると、そこから200メートルほど離れた駅に向かうのだが、近道をするために運動場を渡って後門へと向かうのだ。
そこは彼女以外、向かう者がおらず、明かりも無く暗い。
春樹は黒い服を見に着け、後門の隅で女性教師が現れるのを待った。
やがて、運動場を渡ってくる足音が聴こえてきた。
春樹は身構えて眼をこらした。白のブラウスに黒いスカート。わずかな照明に浮かび上がった姿は、間違いなく女性教師だった。
春樹は息を殺して彼女が近寄るのを待った。
20メートル、10メートル、5メートル、2メートル、1メートル。
その瞬間、春樹は飛び出して彼女を押し倒した。
「……!」
彼女は突然の事に声も出ずに、草むらに倒れた。
春樹は彼女に馬乗りになると、素早くガムテープで口を塞いだ。
「んーっ!んーっ!」
彼女は声を出そうとしたが叶わず、春樹に覆い被さられる。
彼女は何とか逃れようと、身体をバタつかせるが、春樹はポケットからバタフライ・ナイフを取り出すと、女性教師の頬に当てた。