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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第14章-6

あのビーズ!

あのビーズを集めなきゃ!



飛び出した私は、横腹に体当たりを食らって数メートル飛んだ。

「…は…ぁ…っ!」

あばらがきしみ、肺の中の空気を失って、のどが変な音を立てる。

「るるるるる……」

動いている私が…今、飃の標的になった。

説明、説得…考えたけど、意味はない。今の飃には、言葉すら意味を成さない。

私は、一番近くにあるビーズに向かって跳んだ。

「があっ!」

私の後を、ものすごい勢いで飃が追う。

一つ、二つ、三つ…!

四つ目に飛び掛るとき、飃が私の行く手をふさいだ。なんて姿…もはや狗族にも、狼にも見えない。

その中間の、どちらでもない何か。狗族にも狼にもなる必要がない故に、何にも縛られることのない今の飃は、世に存在する理(ことわり)を超越していた。

「私のことを、傷つけないんじゃなかったわけ!?」

悪態をついて、九重の柄で飃の足を払う。当たり前のように見透かされた私の攻撃。飃は高くジャンプして避けた。その隙に…!

「四つ目!」

五つ目…六つ目…七つ目、やった!

あとの一つは!?

「ぐ!」

飃の肘が、背骨に直撃する。

あとの一つは…!?

激痛に、私は無様に地面を転がる。肺が悲鳴を上げ、呼吸するたびに、喉を擦る様な音が出た。

目すら霞むような痛みの嵐の向こうから…飃の足音が迫ってきた。



ああ…

飃は獣のまま…私の不在を悲しむこともなく、我を失ったまま殺戮を続けるのかしら…

そんなこと、させない・・・



飃が、私にかがみこむ。



ぼさぼさの髪が、私の顔にかかる。私はきっと顔を上げて飃を見上げた。闇に彩られた恐ろしい仮面が、私を見下ろしている。彼の目をじっと見つめる。その奥に、共にすごした記憶を思い出させるために…そして、恐れてなどいないことを伝えるために。


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