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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 後編-7

「ちょちょちょっとおぅ、あんた田原くんに何飲ませたのよー!」
「なに言ってんのよ! 是奈ちゃんが変な物飲ませるから、田原くん、壊れちゃったじゃないの!!」
 喧嘩したところで取り返しは付かない。
 どうやら嘉幸、是奈が飲ませたスーパードウピング剤と、都子の七味唐辛子のブースト効果により、身体の臨界点を越えてしまったらしい。
「ぬぅおらららららららららららーーーー!」
 と、湧き上がる体力を抑えられないまま、オタケビと共に、物凄い勢いでもって走り出したではないか。
 そんな嘉幸にしがみ付いていた都子も、振り落とされまいと必死に彼の首にしがみ付き。
 おそらく100メトール5〜6秒と言ったところだろうか? 嘉幸は物凄い速さでもって、さっきまでマラソランナー達が走っていた車道に飛び出すと、是奈と章吾の見ている前から遠ざかり、あっという間にその姿は見えなくなっていた。
「た、田原く〜ん……」
 見ていた是奈もあっけに取られ、力なく片手を突き出して、なごり惜しそうに嘉幸を呼んだが、どうやら頭の中は真っ白だったらしい。その場から動く事もできず、なにげに膝(ひざ)も、ガクガクと震えていたりもする。
 章吾はびっくりして腰が抜けたらしい、その場にへたり込むと、
「あう、あう、あう」
 とか、言うのが精一杯の様子であった。


 ******


『藤見晴市健康マラソン大会』今年で数えて18回目になるこの大会も、毎年県と市が共催して開催している、県下上げての、一大イベントである。
 毎年数多くの参加者はもちろん、有名なオリンピック代表選手なども招待選手として参加していて、それを応援に来る人達、見に来る人達で表参道は多くの人でごったがえしていた。
 一般の人達も自由に参加できる事もあって、かなり人気のある大会では有るが、やはりトップを走っているのは、毎年恒例でもある、オリンピック出場経験のある招待選手か、大学の陸上部と言ったところの選手のようである。
「さあいよいよレースも終盤戦であります。残り2kmを切りました。過酷な42.195kmを征して、トップでゴールに駆け込むのははたして誰か? 現在トップは、やはりこの人、オリンピックのゴールドメダリスト『土佐 礼太』。そして実力では土佐の上を行くとも言われる『高橋 Q太郎』。そしてもう一人、ケニヤの代表選手でもある、あの黒い弾丸こと『イッチャーン・ワダル』! どうやらこの三人のトップ争いは、ゴールまでもつれこみそうであります!!」
 マラソン大会を中継しているアナウンサーの熱のこもった実況に、訪れた観客たちも随分と興奮ぎみで、大盛り上がりを見せていた。
「やはりこの三人の優勝争いで、最後まで行きそうですね、解説の武藤さんいかがですか」
「そうですねぇ。後続との距離もかなり開いていますし。100mの区間計測でも16秒台ですから、ちょっと追いつけませんね。このまま行けば日本新が出る可能性大ですね」
トップを行く3人のオリンピックメダリスト達、誰もが彼等の優勝は間違いないだろうと、疑う事なかれと思っていた。
 その時である。
「おおーっと、これは凄い! なんと此処へ来て物凄い勢いでトップグループを追い上げて来る後続者がいます! いったい何処の国の選手でしょうか!!」
実況のアナウンサー、アドレナリンが沸騰するほどに興奮して、砂ぼこりを巻き上げ猛スピードで追い上げてくる選手? の事を伝えると。街道沿いに集まった人達からも、一斉に歓声の声が上がっていた。
「るーらららららららららぁぁぁぁぁーーーー!」
物凄い勢いで観客の前を通り過ぎて、あっと言う間に見えなくなる謎のランナー。人々の目はそのランナーに釘付けだった。


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