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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 後編-3

「やめろ! このぅ貧乳ペチェパイ力馬鹿!」
 と、悪態付きながらも嘉幸の首にしがみ付き、降ろされて成るものかと必死に抵抗する。
 嘉幸は、やばい! こいつはやばいよ! 本気(マジ)でやばい! このままだと俺が殺される! そんな事を思いながらも。
「ぐっぐるじぃ〜〜!」
 引っ掴まれて、首を絞められて、もがきながらに都子の太ももを(チョーク! チョーク!)とペシペシ叩きながら、苦しむのが精一杯でもあった。
「なによ! この胸だけでかい、頭ん中からっぽ女!」
「うっさいなー! 猿みたいに飛び回るしか芸のない、ダサダサ田舎女!!」
 悪口の攻防もさることながら、とうとう殴り合っての喧嘩を始めた彼女達。
「うわぁやめろーぅ! 二人ともやめてくれーー! 死ぬー! 死んでしまうーー!!」
 嘉幸もとうとう堪えきれず、是奈の手を振り切って逃げ出すと、そのまま勢い良く交差点の中へと飛び出して行ったのだった。しかも信号はまだ、赤だったりもする。


”キキッキー!!”
 物凄い急ブレーキ音と共に、一台のタクシーが嘉幸めがけて突っ込んでくると。
「うわあああっ!」
 嘉幸も大声を上げていた。
「あぶなーい! 田原くーん!!」
 慌てて是奈は都子ごと嘉幸の背中を突き飛ばし、嘉幸は危機一髪を回避する。が、今度は是奈が身代わりにと、タクシーに轢かれそうになる。
 見ていた大勢の通行人も一斉に。
(オオー!)とか
(キャー!)とか、
 声を上げていた。
”ギュギャーーッザザー!”
 タクシーは、是奈を跳ね飛ばして交差点にある横断歩道の真中で止まった。
「朝霞さん!」
「是奈ちゃーーんっ!!」
 嘉幸と都子も、慌てて振りかえって叫んでいた。
 がしかし。
 タクシーに跳ねられた! と思った是奈の姿は何処にも無く。
 と思った次の瞬間。
 空高く舞い上がった是奈が、まるで猫のように、しなやかに空中でもってクルクルっと華麗に回ると、何事もなかったかのようにヒラリと、タクシーのボンネットの上に軟着陸したではないか。
 そして沸き起こる、人々の大歓声と拍手の嵐。
 タクシーの運転手もあっけに取られたのか、口を大きく開けたまま、ただただ呆然と、ボンネットの上で決めポーズを取っている是奈のお尻に見惚れるばかりである。
 さすがは是奈、人並み外れた運動神経は、こんな時でも役に立っていたようだ。短いスカートを気にしながらも、こんな事、驚くほどのことじゃないわ! とでも言いたげに、顔色一つ変える事も無かった様子である。
「よかったぁ!」
 そんな是奈の姿をみて、嘉幸もホっと一安心して胸を撫でる。が直ぐに。
「朝霞さん! ごめん!」
 そう是奈に向かって声を掛けると、そのまま横断歩道を突っ切って、反対側に出て、一瞬振り返りつつも、都子を負ぶったまま総合病院の有る方向へと、慌しく走り去ったのだった。
「あっ! 田原くーん、待ってよー!!」
 是奈も叫びながら、タクシーのボンネットから飛び降りると、ササササーっと田原の後を追って走り出していた。


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