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数学はきっかけ〜前編〜
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数学はきっかけ〜前編〜-3

忘れ物は明日取りに行くか…。
来た道を戻った。

「忘れ物あったか?」
「まだいたのか誠?」
「いたらあかんのかっ!待っとったんやぞ!」
「すまない…。帰るか…」
「どないしたんや?元気ないぞ?」
心配そうに誠は裕也を見た。
「何もない。」
強くはっきりと裕也はこたえた。
まるで自分に言い聞かせるかのように。
「さよか…。帰ろか…」
(何かあったに違いない…。
何でいっつも一人で抱え込もうとするんや…?
助けたくても助けられへんやないか…。
あの時……。無理や…俺がいたとしても何もできひんかった。
いつか頼ってくれよ?裕也…。)
哀しい笑顔で裕也を見つめた。
それからは、普通の大学生活を送った。
あれ以来、黒髪美女現れない。
そんなこんなで、裕也達は大学を卒業してそれぞれの道を歩み出した。
(えらい、はしょりすぎちゃうか?えーかげんやなぁ)

「うわぁ〜。ほんまに裕也教師になりよった…。」
勤め先が決まったと知らせを受け久しぶりに誠と裕也は顔を見合わせた。
「いけないのか?」
「だってお前、人に教えるようなタイプちゃうやん。出来ひん奴はほっとくっちゅーか、何でできひんねんみたいな感じで見下すのに…」
「世の中できない奴はいない。しようとしないだけだ。」
はぁ〜と誠はため息をついた。
絶対教わりとぉない。
心の中で誓った。
「で、お前はそんな容姿で教師するんか?」
上から下まで裕也を見ていった。
「さすがに無理があるだろ…。まだ若いのにこんな格好じゃ…」

裕也は上から下までブランドでコーディネートされている。嫌味にはならず、見る人が見ないとわからないようにブランドマークは出ていない。
「まぁ、服装もそやけど…。顔や顔。どないすんねんハンサム顔。」
今、居酒屋に二人でいるのだが、こんな場所でさえも裕也は女性の注目の的になっている。
「女子高生になんぞ興味はない。」
「いや、そういう意味とちゃうてな、言い寄られたらどないすんねん。若さは武器やぞぉ。切っても切っても来るで。」
半分、脅しのように助言をした。
「…そりゃ困ったなぁ…」
本当に困った様子で腕を組考え出す。
誠はにんまりと笑い、いきなり裕也の眼鏡を外し、髪の毛をグシャグチャと掻き回した。
「っ!なっ、何すんだ?!」
いきなりのことで誠の攻撃をふせげなかった。
「完成や。近寄りたくない男や!で、服も汚らしいの着たらもぉ完ペキや!」
誠は、なんだか自信に溢れた様子で満足げに踏ん反り返っている。
近くに鏡がありそれを覗くと寝起きのような男がうつっていた。
「こんな格好…」
「あかん!その格好じゃないとあかん!しんどいめするのはお前本人やぞ!違う人間を演じるとでも思って頑張れ!」
うんうんと頷き楽しそうに裕也を見ている。
「…面倒よりかはましか…。お前に遊ばれてるのがしゃくにさわるがなぁ」
目を細めて睨みつけた。
「まぁまぁ気にせんと!」
そう言って、二人は酒を飲み始めた。


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