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くさいジャージとインモラル
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くさいジャージとインモラル-3

「はい。疑ってます」
こんな男と付き合う女性がいるもんだろうか。
「だいたい、ちゃんとデート連れて行ったりできるんですか?お金ないじゃないですか」
澤田は少し悲しそうな顔をする。
事実だから仕方ない。お金がなくて悲しいのはこっちだ。
「彼女いたとしても、澤田さんに幸せにできますかねえ?」
給料が安すぎることへの仕返しだ!
まずわたしから幸せにしてくれ。お金プリーズ。ギブミーマネー。
澤田は悲しそうに目を伏せている。
泣いちゃう?泣いちゃうのか?言い過ぎたか?
「斎藤くん…」
「はい…」
「幸せになれるかどうか、試してみるかい?」
「…え?」
「そうしよう!何事も実践だよ!『僕、澤田泉太郎と付き合って幸せになれるかどうか大調査』始動だ!」
澤田は一人で盛り上がっている。ちょっと待って。
「いやですよ!そんなの。勝手に決めないでください」
「いいじゃない。一年間に及ぶ壮大な大調査!」
「一年もですか!人と人が付き合うのはもっと、当たり前ですけど、デリケートなことです。そんな調査でなんて付き合えませんよ。だいたい相手が澤田さんじゃあ…」
そこから先は言い淀む。いくらこんな男でも、悲しいことにわたしの上司なのだ。
「僕のどこが不満?」
…全て…。
「…澤田さんと付き合うってことは、恋人同士がすることを、わたしと澤田さんがするんですよね?」
デートしたりとかキスとか。
「もちろん」
「澤田さんはできますか?」
わたしは絶対できません。
「できるとも!夜の営みのことでしょ。余裕だね。ノリノリだよ。楽勝!」
「…セクハラじゃないですか…」
「うん?」
やっぱり転職した方がいいんだろうか。
「とにかく、わたしはできません。そんなくだらない調査やるなら、他の人とやってください」
わたしはそれだけ言うと、仕事に戻ることにした。
あほくさい。
「…僕に人間の友達少ないの知ってるくせに…」
澤田がすねている。
澤田には猫の友達は多いが、人間の友達は少ない。
「猫のお友達にお願いしたらどうですか?彼女になってくださいって」
言ってやった。
わたし今すごく意地の悪い顔してるだろうな。ケケケ。
「ふん」
澤田は怒ると、「ふん」と言う。
「澤田さんて好きな人いないんですか?」
「え?」
「好きな猫でもいいんですけど」
ケケケ。
そう聞くと澤田は黙りこくった。
どうせ、好きな人もいないんだろう。
それともメスの猫のことでも、思い出しているのか。
まあ、静かでいいか。そう思ってわたしはまたパソコンのディスプレイに目を戻した。
「斎藤くん」
澤田がわたしの名前を呼ぶ。
「なんですか?また、コーラですか?」
パソコンに目をやったまま答える。
「違う。さっきの答え。斎藤くん」
「は?」
また何を言うのか。澤田。
「…なんの冗談ですか?調査には協力しませんよ」
「冗談じゃないよ」
いつになく、というか初めてみる澤田の真面目な顔だった。
本当なのだろうか。だとしたら、こっちも真面目に断らなければならない!


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