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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 前編-2

 すると都子は器用にも飛んで来たうちわを左手でパシッっと受け取ると、醤油だれまみれの右手の指をペロペロなめながら。
「ほんじゃ今度はあたしが、名人芸ってやつを見せてやるかな」
 などと言いつつ、嘉幸と焼き貴方(かた)をバトンタッチである。
 嘉幸はやっと落ち着いて食にありつけるぜ! と、これまた行きもしないのに(海へ行ったとき便利だぞ)とか言って親父が買って来た、プラスチック製折りたたみ椅子に腰を下ろし、少し焦げ過ぎた感のある肉を食していた。
 都子は首に巻いていたバンダナを外すと、くるくるっとねじって頭に巻いて、ねじりはちまきにすると。
「ねー田原く〜ん、松茸が無いけど。……どこ?」
 そんなことを言いながら辺りをキョロキョロっと見渡していた。
「有るか! んなもん!!」
 どうやら都子、松茸を探していたようだったが、そんな物は初めから買って無いと、嘉幸に怒られもする。
「だいたいそんな高価な物を、収入の無い一高校生が、なんの苦労も無く食えるほど、世の中甘くは無いぜ。食いたきゃ自分でバイトでもして買えよ」
 そう言われて落ち込むのかと思ったら、意外と都子もあっけらかんと。
「だめだぞ田原く〜ん。なんでもお金で解決しようなんて思ってちゃ! カッカッカッカ!!」
 そう言って、さも勝ち誇ったかのように、腕を組んで高笑いをしていた。
 嘉幸は、下っ端のぶんざいで生意気な! これは聞き捨てならないと身を乗り出し。
「じゃあどうするんだよ!」
 と声を大にもする。
 すると都子は自信有りげに。
「そんなこと簡単だよ、自分で取ってくればいいんだよ」
 そんな事を言う。
 嘉幸は、やれやれと言った感じで椅子に座り直すと。
「そんな簡単に松茸が取れるわけないだろう」
 と手を振り、ついでに首も振って(だめだめ)と言ったゼスチャーをしていた。
 すると都子は何を思ったのか、不適にも口元をニヤッとさせると。
「そんな事だろうと思って、あたしがちゃーんと取って来ました」
 そう言いながら足元のダンボール箱のを、ゴソゴソっとまさぐり始めたかと思うと。いったい何時からそこに入れておいたのやら、都子は「ジャッジャーン!」と、自分で効果音まで口ずさみながら、赤い大きなきのこを取り出し、それを嘉幸たちに向って自慢下に見せびらかしたではないか。
「うわあー! なんだそりゃー!!」
「おおきいねぇ……」
 嘉幸と清美は、見せられたキノコの大きさもさることながら、毒々しい真っ赤な傘と、白と黒の斑点のあるその姿に、ただならぬ気配を感じたりもする。声を上げながら更には後ず去って、身をちじめたりもする。
「ばか! お前それ毒きのこじゃねーのか! たしか『ベニテングダケ』とか言うやつだぞ、それ!!」
 嘉幸は焦りながらに、きのこを指差しそう言うが。
「そんなのしらなーい」
 と都子はのん気だったりする。
「そんなもん食ったら死んじまうぞ!」
 そう嘉幸が必死に訴えるのと裏腹に、都子は笑いながら。
「何言ってるの田原く〜ん、あたしの強化された胃袋が毒キノコごときで殺(や)られるわけがないじゃない」
 そう言って腰に手を当てがい、2回戦もあたしの勝ちだと言わんばかりに、のけぞって、カカカっと笑っていた。
 確かにサイボーグの身体を持った彼女のことである、普通の人間よりかは丈夫ではあるだろう。毒なんて物が効かないってのもなんとなく解る気もする。がしかし、完全なロボットでは無い彼女だ、生身の部分も有るだろうに、そう言った所へは影響がはたして無いのだろうか? 気楽な顔で笑っている都子を見ながら、嘉幸は考えをあぐねるものの、一抹の不安は消しきれないで居た。


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