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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 前編-1

 ここに世界征服を目論む謎の秘密結社があった。
 が、そこを治める幹部にとっても、また実行犯とも言うべき改造人間達にとっても、休暇は貴重な憩いの時間だったりもする。


「あっほら清美ちゃん、そっち焦げてるよ! ピーマンは二つに切ってから串に刺してね。……おい385(ミヤコ)! 食ってばかりいねーで、少しはこっちを手伝え!!」
『田原 嘉幸(たはら よしゆき)』県立藤見晴高校に通う17歳の男子。
 なにを隠そう彼こそ、世界征服を狙う秘密結社のメンバーであり、幹部の一人であることなど、知っている人は知っているかもしれないが、いちおう誰も知らない事に成っていたりもする。
 そんな嘉幸の隣で、黙々と、野菜を切って串に刺して、肉を刺して、なすを刺して、肉を刺して…… と、器用な手先で持ってそつなく料理をこなしているのが嘉幸のガールフレンド『朝霞 是名(あさか ぜな)』の妹『朝霞 清美(あさか きよみ)』11歳の小学5年生だったりもする。
 そして。
「やっぱり外で食べるご飯は最高だよねぇ」
 と、先ほどから口の周りを醤油だれでべちゃべちゃにしながら、嘉幸が焼いたそばから肉ばかりあさって食べているのが『佐藤 都子(さとう みやこ)』、嘉幸と同じく県立藤見晴高校に通う17歳の女子である。そして彼女もまた、世界征服を目論む悪の秘密結社の一員であり、同結社が極秘裏に開発した『サイボーグ』だったりもする訳なのだが、まあそれも、関係者以外は誰も知らない事にしておこう。
 ところで。
 ひょんな事から知り合いになった嘉幸と清見であったが、かねてより、
「ねーねー嘉幸お兄ちゃん! こんどどっか連れってよ!」
 と、せがまれたのがきっかで、今日は一日、清見と付き合うべく、3人は連休を利用して、秋も深まった近所の『丘の上公園』にバーベキューをしに来たのであった。


 嘉幸は以前、親父が衝動買いしてきたキャンプ用オイルコンロのつまみをネジって、火の調整をしたり、串焼き中の肉をパタパタとうちわで扇いだり、片手間にコーラを飲んで「ンパーッ!」と、けっこう満喫している様子である。
「ねぇ都子お姉ちゃんってば、肉だけ食べて、野菜をわたしに押し付けないでよ!」
 都子は先ほどから、串焼きされたバーベキューの肉だけを食ってしまうと、他のピーマンやら、なす、ねぎと言った野菜は「はいっ!」とか言って全部、清見に串ごと渡していた。
 清見は健気にも「もったいないな〜」と、渡された野菜を片っ端から食べていたのだったが、どうやら限界のようである。
 そんな清美に向って都子は。
「清美ちゃん、好き嫌いしてたら、背が伸びないんだぞぉ」
 などと冷やかしを言うが。
「わたしもお肉食べたいよー!」
 と清美も臍(へそ)を曲げたりするのだった。
 すると都子。
「そんな肉ばっかり食べてたら、ブクブク太っておデブさんになっちゃうぞぉ。……たぶん」
 とか何とか言いながら、自分は相変わらず肉ばかり食べながら、話を嘉幸に振ったりもする。
「ね〜田原く〜ん、おじいさんの遺言にもあるよね〜」
 そんな都子に向って嘉幸は。
「無ーよ、そんなもん!」
 即答していた。
 都子は少しつまらなさそうに「ふーん……」と言ったきり、また黙々と肉を食べ始めるのだった。
 そんな都子の態度に少し腹を立てたのか。
「とにかくお前! 食うのはいいが、ちっとは手伝え!!」
 嘉幸は持っていたうちわを都子に向って投げつける。


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