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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈貴未篇〉前編-10

「そちらの御方、日向殿とおっしゃったか。」

急に自分にふられ、日向は反射的に勢い良く返事をした。

「火の精霊・祷(いのり)をお連れですね。」

その一言で一瞬にして空気ははりつめた。日向の表情に動揺が見られる。貴未はそれを見ていた。

「日向、本当か?」

火の力を日向が持っているということはごく限られた者、御剣関係者しか知らされていなかった。貴未がこの事を耳にするのは初めてだ。

「世界を統率する者。日向殿、貴方も貴未のいう王の下に仕えてらっしゃるのですか?」

「世界を統率する者?」

長の言葉はどこか聞き覚えのあるものだった。貴未は思わず繰り返して呟く。

「僕は、あの、置いてもらっているだけで。」

どもりながら長の言葉に訂正をしようと日向は身振り手振りで頑張ってみた。しかしうまくはいかず、少し頭の整理を付けた貴未が助け船を出した。

「日向は来たばかりで、客人という扱いです。」

安心したのか日向は思わず笑顔になった。

「長、世界を統率する者とはどういう意味ですか?」

貴未の声は威圧感があった。日向から笑みが消え、長の言葉を待つ貴未を見ていた。そして同じように長に意識を向ける。

「火の精霊ということは、日向殿は火の力を持っている。代々火の力を持つ者が世界を治めていたと聞く…ならば。」

現在、火の力を持っている日向は世界を統率する者に値するという所から、その言葉を放ったと長は続けた。

火の力、精霊を持つ日向、ということは日向は御剣になる。貴未は日向を見た。

千羅に口止めされていたという事もあるが、自分の力を黙っていたという後ろめたさから日向は目を逸らしてしまった。貴未はただ黙って見ていた。

 気を取り直し、貴未は再び長に向けて口を開く。

「長、光の精霊の居場所を教えてください。」

貴未の目は真っすぐだった。彼は火の力を持つ日向を連れている、完全な御剣関係者になっているのが分かった。

「貴未、お前の仕える王は光の力を持つ者か?」

「はい。」

「名は?」

「カルサ・トルナス。」

長は目を閉じて片手で顔を覆った。またしても貴未は変な空気を感じずにはいられなかった。

それはマチェリラの時と同じもの。


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