投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「とある日の保健室」
【学園物 恋愛小説】

「とある日の保健室」の最初へ 「とある日の保健室」 19 「とある日の保健室」 21 「とある日の保健室」の最後へ

「とある日の保健室最終話」-2

「……嘘」
ぼそ、と双葉先生が呟いた。俺はその言葉に過剰に反応する。
「私、教師だよ?生徒の橘君とそんな事したら、お先真っ暗よ」
努めて明るい口調で双葉先生は俺に言った。俺にはそう見えたんだ。
だから俺は、
「きゃっ!」
なにも言わず、
「た、橘君……」
優しく、ゆっくりと双葉先生を抱き締めた。
泣くな、俺。今生の別れじゃあるまいし。
泣くな、俺。ここで泣いたら、先生は安心して見合いに行けない。
泣くな、俺。泣くんじゃない……。
「じゃ、ここでさよならしよっか。あとになると辛いし。……橘君」
「はい」
「さようなら。また逢おうね」
「はい」
「さ、出てった、出てった!そんな辛気臭い顔、橘君には似合わないぞ!」
「はい……」
俺は双葉先生に背を向けた。大事な言葉も言えぬままなのに。
いいのか?このままでいいのか?言わなくていいのか?
駄目だ!
「双葉先生!」
俺は双葉先生に向き直った。そして言ったんだ。
「っ……さようなら……」
別れの言葉を。



うわああぁぁぁ!
達也に!達也に言っちゃった!やっちゃった!
恋人になっちゃった!
「あ。優花、お帰り」
優香の言葉なんて耳に入るか!
玄関の戸を開け放った私は、そこに立っている優香を押し退け、私の部屋への階段を上った。ダンダン、と激しい音をたてながら。
「なになに?なんかあったのぉ?」
だから優香の言葉なんて耳に入らないってばぐえっ!
「放……じて……」
いつの間に追いついたのか、優香は私の襟首を掴んで放さない。
苦しいんだけど。
「なにがあったか話す?」
「はな……す……から……はな……して……ぷはっ!」
ようやく解放された。
と言うか、それ以前に優香の奴、大学から帰ってくるのが早くない?……いつものサボりか。
「さて、放したんだから、話してもらおうか?」
「う……分かったわよぉ……」
呂律がしっかり回っている事を再確認しつつ、私は優香にすべてを話した。すっっっごく恥ずかしかった……。
「うわぁ、興奮剤使うなんて、あんたもえげつない事するわね。さすがは私の妹」
「うっさい!」
「それから?」
「え?」
「その彼とは、どういう関係になったの?」
「あ……」
また浮かんだ、達也の言葉。
ま、しばらく付き合ってみるか。
「あああぁぁぁ!」
「あ!ちょっと!」
顔から火が吹き出そうなくらい恥ずかしい。本当に、マジで。
急いで階段を駆け上がる。自分の部屋の前まで来たら、乱暴に開け放って私が入り、また乱暴に閉じる。
「はぁ……はぁ……はぁ〜……」
扉を背に、私はその場に崩れ落ちた。
達也の彼女に、なっちゃった。
「ああ……明日からどうしよう……」
お弁当、作ってあげようかな。もちろん興奮剤が入ってないやつ。おかずのメニューはどうしようか。とびきりおいしく作ってあげるんだ。達也がおいしいって言ってくれるようなお弁当。
食べ終わったあとはもちろん、
「恋人の……する事……」
キス……かな。Cかな?
「……!馬鹿!私の馬鹿!なに考えて……」
でも、ありえなくもない。私から迫るかもしれないし。だって達也だもん。
「好き……達也。ずっと、ずぅっと……」


「とある日の保健室」の最初へ 「とある日の保健室」 19 「とある日の保健室」 21 「とある日の保健室」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前