ヒトナツA-4
夏休みに入り、はや数日。
本格的に生活サイクルが乱れてきた。
「ん」
ベッドから体を起こし、枕元の目覚まし時計を見やる。
時計は間も無く午後一時に差し掛かろうとしていた。
「あー、よく寝た」
パンツ一丁でゆっくりと階段を下る。
ババアはパートでいないし、渚は姿が見えない。部屋に籠っているのか、出かけたのだろう。
とりあえず、このベタついた体をさっぱりしようとバスルームへと向かった。
脱衣所に行くが、着替えなどは置いていない。
安心してパンツを放ると、バスルームの戸を思いっきり開けた。
そこに広がった世界は
生まれたままの渚の姿だった。
「……」
「……」
黙って戸を閉めて、パンツを履き直すと、バスルームを後にした。
出る瞬間、渚の絶叫が聞こえた気がした。
部屋に戻り、ベッドに寝転ぶ。
幸い今ので目が覚めたのか、睡魔は襲ってこず、二度寝の心配はない。
「見ちゃったよ……」
とは言っても、渚は湯船に浸かっていた。
非常に残念。
おっと、桜さんごめんなさい。
そういえば、そろそろ桜さんをデートに誘おう。
思い立ったが吉日。今すぐメールだ。
「えっと」
『桜さん、よろしければ近々デートしませんか?』
よし。
俺にしては珍しく普通だが、まあよしとしよう。
いや、普通によしだ。
変なこと言うからいけないんだよ。うん。
数分後、返事が返ってくる。
『うれしい!喜んでお受けします(*^_^*)』
「っしゃああああああ!」
ガッツポーズ。
ってそうだよな、付き合ってるんだから用事がなけりゃ普通は了承してくれる。
『ありがとう!行きたいところとかある?』
『わたしたちにとって初のデートですし、健吾くんにおまかせします(*^_^*)期待してますよ(笑)』
『わかりました!じゃあ考えときます!』
『はい、いいところが決まったらメールください(*^_^*)』
『了解!』
「っしゃあああああああ!」
ガッツポー…
「じゃねえええええ!」
やばい。
デ、デート?
なにそれ?
真島健吾、またしても困りました。