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…20年後。
僕はそんな思い出もすっかり薄れながら息子の野球の試合を観戦していた。
あの日のような暑い日だった。
息子の第一打席は三振。
第二打席もその次も…
ベンチに戻った彼のとこに僕は駆け寄った。
次はいよいよ最終回。
僕は息子に諭すように優しく語りかけた。
打てないって思ってただろ?
「僕には無理だよ。父さん。」
打てないことを前提で君はその先を見つめていた。
「だってあのピッチャーの球速すぎるんだもん。変化球だってわからないし。」
打てないと思い込んでいた世界の果てで都合よくよい結果が出るはずがない。
「じゃあ僕なんかには打てないってこと?」
君の心が思いが世界をつくっている。闘う前からあきらめていたら、勝てるものも勝てないさ。
「だって怖いんだ。あんな球打ち返せるわけないじゃん。」
顔を赤くして興奮気味に彼はどなった。
ぼくは息子の肩に優しく手を置いた。
しっかりを目を開けろ。そして信じろ。
おれは打てるんだと。
自分の可能性を信じて打席に立てばいい。
それから始まるんだから。
打ち崩せない世界を打ち壊すのは君がキミを信じられるかどうかだよ。
「………」
息子の目には大粒の涙が溢れた。
信じてみろ。おもいっきりの君を、君の想像力で。
涙を拭いて彼は僕を見上げた。決意の表情。いつのまにかこんな顔できるようになったのかと嬉しくなった。
「わかった。行ってくるよ。父さん!!」
彼の後ろ姿は力強く、そして昔のあの自分の姿が重なって見えた。
かっ飛ばせ〜佐山。
ヒット打て〜佐山。
あの日と同じような声援。
きっと彼には力強い応援歌に聞こえているだろう。
カキーンっ。
スタンドに向かい、勢いよくアーチが球場を描いた。
ホームに戻ってきた息子と僕は思いきりのハイタッチをした。