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あれは
8月の第二日曜日だっただろうか。 
ひどく蒸し暑い夏の日だった。 
僕は汗だくでバットを握り締めていた。 

かっ飛ばせ〜佐山
ヒット打て〜佐山。 

みんなの声援が聞こえる。 

重い塊のように身体にのしかかってくる。 

9回の裏。 
3対2。 
走者は1、3塁で次の塁に目を向けている。 
ここで一発が出れば逆転サヨナラ。


でもツーアウトだ。 

打たなければ、 
いや打てなければ負けてしまう。 


頭の中には空振りする僕の無様な姿。 
バットは球を狙って弧を描く。 
弧とそれの直線は交わることはなく、ミットに沈み込まれて…… 

打てない。 
打てない。 
打てっこない。 
僕には打てるはずがない。 

打てなかったら僕はどうなる。 
どう取り繕えばいい。 

どうしたらいい。 


そんなことが瞬間、頭に描かれた。 
敗色濃厚なイメージ。 

ピッチャーは勢いよく球を滑らせる。 

僕は気持ちを落ち着かせてバットを振った。 

シュッ 

球とその先があと少しで 
あと… 


バンっ 


ストラーイクっ。 
スリーアウト。 
ゲームセット。 



僕は体勢を崩して倒れこんだ。 

「あぁ〜佐山が空振りしちゃうから負けちゃった。」
「なんでアイツ打てないんだ。」

みんなからの冷たい視線が僕の背中を射す。 


僕は肩を落として荷物を片付けた。 

とぼとぼ僕は家に向かう。

家についてからも僕のこの情けない気持ちは立ち直ることもなく、汗だらけの身体を癒そうとお風呂へ向かう。


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