蒼い月の少女-1
「突然ですが、今日からこのクラスに転校生が入る事になりました。
皆さん仲良くしてあげて下さいね。」
私立菊ノ門学園三年C組。
担任の圭子に紹介され教室に入って来た転校生を見て、クラス中が静まり返りました。
なぜならその少女があまりにも美しかったからです。
栗色の長い髪、聡明さの滲み出た額、肌は透き通るように白く、瞳は少し碧みがかっており生粋の日本人とは思えません。。
何より男子生徒の目を釘付けにしているのは、その完璧なプロポーションに外なりません。センス良く着こなした制服が、少女を清楚にエロチックに演出しています。
「みなさん、ごきげんよう。」
美少女の自己紹介にクラス中から歓迎の拍手と嬌声が巻き起こりました。
この年頃の少年少女達が羨望する美とエロスを、生まれながらに授かった、奇跡の女子高生。
それがこのお話の主人公、四万十蒼子なのです。
「じゃあ、席は後ろの綾さんの隣で、綾さん暫くの間教科書見せてあげてね。」
蒼子はクラス中を一瞥し、愛らしい微笑を浮かべたまま軽く会釈すると、優雅な足取りで言われた席に付きました。
「何あの生意気なツラと態度、絶対許せねーな。あいつもしめてやんなきゃね。」
腕組みをした由香里が取り巻きの一人に言いました。
由香里はこの地域の港湾業を牛耳る大物実業家の娘です。
学校は父親から多額の寄付を受けており生徒は勿論、教師でさえ由香里には逆らえません。
それに加え学校一の札付き、紘一と付き合っていて、カップルで不良グループを率いていました。
「あ、あの、わたし綾、よ、よろしくね。」
小柄で幼さの残る綾は、上目使いに蒼子を見ながら、おずおずと閉じたままの教科書を真ん中に置きました。
「御不自由おかけいたします。わたくし四万十蒼子と申します。以後お見知り置きを。」
蒼子は小首を傾げ涼やかな微笑みとともに綾に挨拶しました。
「は、はあ、、、。」
「さあ、静かにして、授業始めるわよ。
69ページ開いて、ええと早速四万十さんに読んでもらおうかな、ちなみに彼女はあの名門中の名門、エネマ女学院から転校してきたのよ。四万十さんの英語の発音、みんな聞かせてもらいましょう。」
「綾さん、お借りいたしますね。」
「は、はい、でもあたしの教科書は、、、。」
蒼子は洗練された仕種で教科書を取り上げ、スラリと席を立ちました。
クラス中が全神経を蒼子に集中するかのよう注目しています。
でも、いつまで経っても蒼子は読み始めません。
眉間に皺を寄せ、怪訝な表情で立ち尽くしたままです。
再びざわめき立つ教室。
「センセー、ぜーんぜんたいしたことないんじゃねーのぉ。エネマ落ちこぼれて転校してきたんだよ、こいつ。」
由香里の言葉に一部ゴマスリ笑いが起こります。