結界対者 第三章-2
転校初日に、訳も解らずに例の力を暴走させてしまった俺を監視する為に行動を共にする、それが間宮が言うところの俺と登下校を共にする理由。
しかし最近、放課後になると何故か、下校ついでの買い物や、ちょっとした用事にも付き合わされている。
別に、それらに関しては暇だから構わないが、流石に今回のアイスクリームは遠慮したい。
「なあ間宮、俺はあまり甘いモノは好きじゃ……」
「アタシは好きなのよ!」
言い終わる前に、赤い瞳がギラッと光を放った。
ヤレヤレ、だ。
押しが強いというか、傲慢というか、我が儘というか……
「あのさ、敢えて訊くが、お前って何で俺と帰ってるんだっけ?」
「決まってるじゃない、アンタを監視する為よ!」
呆れながら訊く俺に、間宮がニンマリと微笑みながら答える。
監視ねえ……
まあ、いい。
どうせ今日も暇なのだ、仕方が無いから付き合ってやるよ、面倒だがね。
望む事は遅々と、望まない事は早々と俺のもとへとやってくる。
まあ、これは、誰に対しても同じだろうが、さしずめ今日の放課後の予定は間違いなく後者だ。
もしも仮に誰かから、それほどにアイスクリーム屋に行くのが嫌なのかと訊かれたとして、もちろんだと強く頷くつもりは俺には更々ない。
ただ、甘いモノが好きではないのと、ああいう場所は、男にはあまり縁が無いモノに思える事、それがこの憂鬱な気分の内訳といえるだろう。
そして迎えた放課後……
「柊っ、おそいっ!」
辿り着いた校門には、腕組をしながら、イライラと仁王立ちする間宮が待ち受けていた。
「なんだよ、これでも、いつもより急いだつもりだぜ?」
「結果論よ、結果論! さあ、早く行くわよっ!」
颯爽と歩き始める間宮の勢いにつられて、俺も渋々と歩きだす。
そして、歩きながら
「なあ、春日さんとか誘ってさ、女の子同志で行けばいいんじゃないか?」
と往生際の悪い事を言ってみたりする。
「みのりは駄目」
「なんで?」
「駄目だから」
答えになってない。
「なあ間宮、いつだったか、春日さんの事を偽善者とか何とか言ってたよな」
「え? ああ……」
「お前、そんなに春日さんの事が嫌いか?」
「別に…… それほどじゃないけど……」
言いかけた間宮の歩幅が、少しだけ狭まった気がした。
だが、知りたいから、俺は言葉を止めない。
「じゃあ、なんでさ」
「だって、アタシと居たら、あの娘まで変なふうに見られるじゃない」
うつ向きながら歩く、後ろ姿から溢れた言葉に、不意に俺は初めて間宮と学校へ向かった朝の事を思い出す。