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結界対者
【アクション その他小説】

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結界対者 第三章-1

―1―
 
 最近、改めて気が付いた事だが、この街の朝は他の街のそれよりも忙しい。

 アパートから学校へと向かう途中に交差する駅前へと続く大通りには、乗客を詰められるだけ詰め込んだ様々な模様の路線バスが列を作り、その両端の歩道には四月の最後にも関わらず照り返す、気の早い初夏の陽射しに少々の汗を額に光らせた人々の河が、早足に駅へ向かって俺の目の前を流れて行く。


 俺が、この神埼で暮らし始めて、既に二週間が過ぎようとしていた。
 ちなみにこの、過ぎ去った二週間近くの時間は、例の「面倒な事」に巻き込まれてから今までの時間であり、そのせいか流石に、最近はその「面倒な事」に対して、何処か慣れに似た感覚を自分の中に感じていた。

 面倒な事…… 結界、対者、忌者……

 そして今、俺の隣を制服のスカートを翻しながら、意味もなく悠然と歩く間宮セリ。

 実は最近、一番の面倒は、この間宮ではないかと思い始めていたりする。

「ちょっと! ボケーッとしてないで人の話を聞きなさいよっ!」
「へ……? な、なんだっ?」
「なんだっ、じゃないわよっ! 放課後よ、放課後! 今日の放課後!」

 別にボケーッとしていた訳ではない。
 間宮が、先ほどから何かを喋っていた事には気が付いていたが、いまいち感心が持てなかっただけだ。
 しかし、ただでさえ「面倒」なコイツが、更に「面倒」になるのも困るから

「で、放課後がどうしたって?」

改めて訊いてやる事にする。

「……あんた、バカにしてる訳?」
「してねーよ、それより早く用件を言え」
「さっきから言ってるじゃない!」

 全然、話を聞けていなかった此方にも非はあるものの、いきなり騒ぎ出した挙句に睨みつけて、バカにしてるなどとは随分だ。
 いや、こんなのは今に始まった事ではないのだ、もはや何もいうまい。

「……わかった、わかった。 ちょっと考え事をしてたんだ。
だから、もう一度話してくれよ」
「んもう、まったく」

 ヤレヤレ言わんばかりに顔をしかめる間宮。
 だが、それはコッチのセリフだ。

「今日、駅前にさ、新しいアイスクリーム屋さんが出来るの!
 だから今日は、最終の授業が終わったら、大急ぎで帰り支度をするのよ? 解ったわね!」
「大急ぎ…… って、おい! 俺も行くのか?」
「一緒に帰るんだから、当たり前でしょ?」

 立ち止まり、向き直りながら、言い放つ間宮。 
 俺は唖然としながら

「……またかよ」

と溜め息。

 そう『また』なのだ。
 ここのところ俺は、放課後は決まって間宮に連れ回されている。


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