結界対者 第三章-18
アミューズメントパークねぇ……
そして、街の端、彼方に派手なアドバルーンを浮かべた白く大きな建物を見つけた。
アレだ!
気が付くと陽射しは傾き、思わず覗いた腕時計は五時と六時の間を刻んでいた。
今から歩き始めるとして、樋山の言っていた七時には少し早く着きそうだが、七時丁度では遅い。
奴がコトを始める前に、そこに行って止めさせなくてはならないのだから。
さて、先を急ぐとしよう、もたもたしてはいられないのだ。
その建物に近付いて、改めて看板を見上げた時、俺は今日初めて樋山が昨日この建物を「楽箱」と呼んでいた事を思い出した。
そして、その楽箱を「ゲーセン」と呼んだ俺に、いぶかしげな視線を投げた事も。
確かに、コイツをゲーセンと呼ぶのは失礼かもしれない。
ちょっとしたビル程の高さと、ちょっとしたスーパー並の幅と奥行き、窓の無い白塗りの壁には「楽箱」と大きな看板が掲げられ、その下に「カラオケ、ゲーム、ビリヤード、ダーツ……」などと、何でもあります感一杯に書いてある。
とりあえず、正面の入り口らしきドアから中へ……
すると、ものの数秒も経たないうち、人気の無い受付のカウンターくらいしか、目の前様子を把握しきらないうちに、俺は数人の男に囲まれた。
畜生、最近の俺、こんなのばっかだ。
「すいません、お客様。当店は本日夜六時半よりオープンの予定でございます。今暫くお待ちくださいませ」
それを言うのに、俺を睨みながら囲む必要があるのか?
全く、樋山の取り巻き連中は、本当にロクな奴がいない。
「あのさ、俺、樋山さんに呼ばれて来たんですけど?」
樋山さん、と口にした瞬間、囲みの中の俺の正面にいた奴の鼻の辺りが、ピクリと動いた気がした。
そして、そいつは、間違いなく似合ってないタキシードの様な店の制服の胸ポケットから携帯を取り出すと、何やらコソコソとやりはじめる。
そのまま、暫く……
突然、俺を囲んでいた男達が、何か一斉に号令を受けたかの様に後にさがり、同時に薄暗い店の奥から、カツカツと靴音が近付くのを感じた。
やがて、それは白い背広を纏った男の姿を得て、こちらに歩み寄る。
「柊君、やはり来てくれたね」
そこには、感慨深げに語りかける、樋山の姿が在った。