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結界対者
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結界対者 第三章-17

―7―

 ここ数日、とはいえ二日前からだが、放課後になると何かしら色々とあって、どうも落ち着かないまま一日が終わってしまう傾向にある。

 そんな事を、ぼんやりと考えながら歩く、いつも通りの放課後の大通り……
 ただ一つ違うのは、今日は俺の右隣に、いつも居る筈の間宮が居ないという事だ。
 実は、昼休みの間に教室に間宮が居ないのを見計らって、間宮のクラスメイトである春日さんに「用事があるから先に帰る」と伝言を頼み、午後の授業が終わるや否や早々に学校を抜け出して来た。
 直接言えば、また煩くて面倒だからな、間宮は。

 一昨日の三馬鹿の件は、まあ良かった。
 あの時のそういった気分は、俺の個人的かつ内面的な部分の問題だったし、三馬鹿に対者の事がバレたとはいえ結果的には上手く誤魔化せたし、奴らを助けてやれたのだから。
 しかし、昨日…… 昨日の、樋山だ!
 奴は何やら、とんでもない事をやると予告した後、その「とんでもない事」に俺を招待すると言い出した。
 挙げ句の果てには、此方が何と返事もしないうちに「君は来る」と言いきり、姿を消して……
 結局俺は、こうして樋山の言った通りに、奴のやろうとしている「とんでもない事」の会場へと足を運んでいる。
 しかし、それは、ただ単に誘われたからという事ではない。
 行かなければならない理由と目的を得てしまったから。

 樋山の言う、とんでもない事…… つまり「結界を消滅させる」という事を止めさせるという目的。
 そして、それをしなければならない理由は……

『さっきは、ありがとうね』

 思いかけた刹那、不意に昨日の、夕暮れの見張らし台での間宮の言葉が頭に浮かんで、俺は思わず「ちがう」と声を漏らしてしまう。
 たしかに、少しは、間宮の為であるかもしれない。
 だが、それ以上に、結界に対する樋山の考え方について感じる疑問の方が大きいのだ。
 五百年もの間存在してきた結界には、必ず何かしらの意味がある筈。
 それを単純に、忌者を惹き寄せるだけの存在ととらえ消し去ろうとするのは、やはり何処か間違っている気がするし、危険とも感じる。
 それに昨日、サオリさんに聞いた話によれば、これらの樋山の行動には若干の私怨が含まれている気がしてならない。

 とにかく止めさせる、たとえ「力」を使ってでも。

 俺は、午後の最中に差し掛かり駅へと向かう人の流れを増した大通りを、それに流されながら足早に進んで行った。



 樋山が昨日言っていた南町という場所は、駅を中心に見て俺の通う西高の位置から丁度反対側にあたる。
 造成地で何も無く、つまらない場所…… そう噂に聞いていたから、この街で暮らし始めてから今までの間、特に行ってみようと思う事は無かった場所。
 駅前を行き過ぎ、ホームを跨ぐ様に位置する駅舎に付随する歩道のみの跨線橋を渡る。
 階段を登り、駅舎を横目に見ながら、再び階段を今度は下り。
 そして下りかけた瞬間、南町と呼ばれる界隈の景観が俺の目の前に広がった。

 結構、いろいろあるんだな……

 確かに造成地だけあって、地肌を晒した空き地が所処に見られるものの、中心を走る一番広い通り沿いには、既に何軒かのファミレスや、何かの安売りの店が出来ていて、わりと人の流れも多い気がする。
 足を止めて、それらを眺めながら俺は、樋山の言っていた建物らしきものを探してみる。


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