飃の啼く…第12章-6
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「あだま、いだぃ…」
がんがんと頭が揺れるたびに鐘が鳴る。揺れなくても鳴る。むしろ、四六時中頭が揺れているような気がする。飃が煎じてくれたあったかい薬湯を飲んで少しは楽になったけど、昨日の記憶はあいまいだった。せっかくのクリスマスに二日酔いなんて、ありえない…。おまけに記憶もない。
「何があったっけ…?」
そう聞くと、飃は耳をぴくっとさせて答えた。
「…あらためて酒の偉大さを思い知らされるようなことだ。」
にやりと笑う。長い犬歯が覗いて、意地悪っぽさが増す。
「ちょ…それって…」
顔が赤くなる。布団を顔まで引っ張りあげる。
「なんかヘンな事した?私?」
飃は厳かに首を振り、私を寝かせるとさっさと台所に戻っていった。
目をつぶって痛みに耐え、それでも不服そうな顔をする私の横に、飃は腰掛けた。
「お前がどんなことをしても、さくら。」
羽根のように優しく、私の額にキスをした。
「お前の全てが好きだ。だから心配などするな。」
そう言われちゃうと…何にもいえなくなるじゃない…
そこで、はめたままの指輪に気づいた。三つ並んだハート。愛のしるし。私はもう一度目を閉じて、テレビから聞こえるクリスマスソングに耳を傾けた。
「Although it's been said many times, Many ways: "Merry Christmas to you"…(何度も、いろんな方法で告げられてきた言葉ではあるけれど…『あなたにも、良いクリスマスを』…)」
「…メリー・クリスマス、飃。」