投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 135 飃(つむじ)の啼く…… 137 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…第12章-3

「その…指輪ならそこにしろと颪のやつが…ええ…『手羽根井』だったか?」

ほんとは少し違うけど、私はうなずいた。声を出したら、震えてしまうとわかってたから。その指輪は、金属なのにかすかに暖かいような気がした。蝋燭の光を反射しているせいで、炎が指輪の中で踊っているように見える。

「有難う、飃…!」

席を立って、飃に飛びついた。肩に顔をうずめると、暖かい手が私の背中を撫でてくれた。私は、そのまま何時間でも、何日でも、そうして抱きしめられたまますごせるような気がした。でも、

「えへ、実は私からもあるんだ、プレゼ・・・贈り物。」

クローゼットの一番奥にしまっておいた袋を取り出してくる。

「はい!」

小さな、黒い箱。そこに入っているものをみて、飃の目が細くなる。

「考えていたことは、一緒か。」

「そうみたい。」

飃の長い指に似合う、シンプルなシルバーリング。左手にきらりと光るそれを、飃は愛おしそうに撫でた。「嬉しい」も「有難う」も無い。でも、その表情だけで、私は十分だった。その表情だけで、本当に幸せな気持ちになれる。



「乾杯!」

学生の私のうちの台所にある食器の中で、一番大人っぽい華奢なグラスが音を立てる。

薄めていない…つまり、カクテル以外のお酒をストレートで飲むのは初めてだったから、はじめの一口はかなりむせた。

「まださくらには早いか。」

そう言って笑う飃を見返…いや、認めよう。意地だ。意地だけで、きっかりボトルの半分は飲み干した。



そう。

飲み干したところまでは覚えている。



+++++++++++++++



まずい。

目が据わっているではないか。

さくらは下戸ではない。そうにらんで止めずにどんどん飲ませたのがまずかった。飃は後悔し始めていた。

「つぅ〜むぅ〜じぃ〜!」

きゃははは、と、いきなり笑い出す。見ている分には面白いが、何かいやな予感が…

椅子から立ち上がると、危なっかしい足取りで飃の方に向かってくる。

「おっと!」

受け止め損ねて、ベッドの方まで行ってしまった。ぽす。と、ベッドに着地する音。そして、笑い声。

「あははぁ、つむじぃ〜、カムヒア〜ん。」

いや、これは自分の責任だ。やれやれと首を振って、台所でコップに水を注ぐ。


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 135 飃(つむじ)の啼く…… 137 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前