高崎龍之介の悩み 〜女難〜-16
「ま、それはともかくとして……龍之介は過去にとある女の人からひどい目に遭わされたせいで、心に凄い傷があるの。その傷が原因で、私以外の女は実の母親でさえ触れないのよ」
「それが、昨日の悲鳴の原因だと?」
真継の言葉に、美弥は頷く。
「昨日は龍之介から迫った……なんてあるはずがないから、谷町さんが迫ったんでしょ?それが、龍之介のトラウマに触れたのよ」
「なーる……分かりました」
真継は立ち上がり、菜々子の首根っこを引っ掴んだ。
「菜々。行くぞ」
「え!?」
「いいから来い。お前の割り込む余地なんざぁ一ミクロンの隙もないような人達、相手にしてたってしょうがないだろう」
「ち、ちょっ……痛い!離してよ!」
保健室を出てからもぐんぐん進む真継の強引さに、菜々子は腹を立てた。
「いい加減にして!!」
菜々子が叫ぶと、真継はさすがに足を止める。
「いったい何なのよ!?」
「……あの二人に割り込むなって言ってるんだよ!」
真継の剣幕に、菜々子はびくっと身を震わせた。
「お前の事だからどうせ、高崎先輩の見た目とぶら下がってるモノに興味湧いたんだろ?だけど高崎先輩は、伊藤先輩以外の女は恐くて触れないんだ。ンな不毛な追っ掛けは止めて、現実見ろよ!」
「げ……現実って……」
真継は、深いため息をつく。
「好きだ」
「へっ!?」
唐突な言葉に、菜々子は耳を疑った。
「聞こえなかったか?俺は、菜々が好きだ」
「…………………………ええっ?」
噛んで含めるように、真継は言う。
「つい最近気が付いたばっかりだけど、俺は菜々が好きなんだ。幼馴染みじゃなく、一人の男として」
「ま……真継が、あたしを……す、好き?」
言葉の衝撃のせいか、菜々子はあたふたと妙な行動を取り始めた。
髪を掻きむしったり頬をつねったりしたかと思うと、何のつもりか地団駄を踏んだりする。
あっぱれなまでの挙動不審っぷりに、真継は思わず笑い出した。
そして、菜々子を抱き締める。
「赤萩真継は、谷町菜々子が好きです。セフレなんかじゃなく、恋人として付き合って下さい」
「……」
頬どころか体全体が火照っているのか、抱いた菜々子が妙に熱い。
「え……ぅえ?え?」
あたふたした声を出す菜々子だが、真継の腕から逃げようとはしなかった。
「逃げないってこたぁ、返事はOKって事で構わないんだな?」
「えっ……ち、ちょっと待って?」
「待たない。今すぐ返事が欲しい」
「え〜〜〜〜っ……?」