Strange days-4
ー夕方ー
「お先に失礼しまーす」
受付を通って帰路につくめぐみ。玄関ドアーを出て左右を植え込みに囲まれた石段を降りていくと、一番下の段に女の子が座っていた。
(アレッ?あのコ、今朝の)
めぐみは石段を降りてその場を通り過ぎながら顔を確認する。やはり間違いなく受付で騒いでいた女の子だった。
めぐみは意を決して彼女に声をかけた。
「敦さんを待ってるの?」
沙那は反応してめぐみを見た。
「アンタ誰?」
ぶっきらぼうな口調とめぐみを睨む目は、敵愾心むき出しのそれだった。だが、めぐみはそんな事は気にしないそぶりで沙那に言った。
「私ね。敦さんと同じ職場なの。敦さん、今日も泊まり込みの仕事だから待ってても来ないわよ」
めぐみにそう言われて沙那はプイッとソッポを向いた。
「あんな奴と思わなかった。死ねばいいんだ…」
「あなたに何が分かるの!敦さんは良い人よ」
めぐみは沙那の言葉に思わず声を荒げてから口をつぐんだ。沙那はめぐみをまじまじと見つめると、ニヤッと笑って、
「お姉さん。敦の事、好きなの?」
その言葉にめぐみは一瞬、躊躇するがすぐに落ち着くと、
「残念ながら違うわ。さっきも言った通り同じ職場なの」
めぐみは続けた。
「あなたには悪いと思ったけど、ウチの受付で揉めてたじゃない。アレ、どういう事か教えてくれない?」
めぐみの問いかけに沙那は押し黙っていた。めぐみはなおも続ける。
「約束は出来ないけど、敦さんに頼んでみるから」
すると沙那の険しい目付きが緩んだ。
「お姉さん。お腹空かない?」
「エッ?」
「そこの角にさ。ファミレスが在るじゃない?」
沙那の誘いにめぐみは微笑んだ。
「いいわ。私も夕食前だから。行きましょう」
二人は黄昏時のラッシュ・アワーの続く大通りの歩道を、西日を背にして歩きだした。
200メートルほど歩いただろうか。めぐみと沙那は目当てのファミレスに入る。
まだ夕食には時間が早いのか、テーブルは閑散としていた。めぐみは窓際の席に座り、ウェイトレスに注文を待ってもらった。
「さあ、これで話が出来るわ。聞かせて」
めぐみが沙那を促す。
沙那は繰り返すように知佳子との出来事をポツリポツリと聞かせる。