Strange days-2
「めぐみちゃん!ありがとよ」
と、言って袋からサンドイッチを取り出す。めぐみはぶっきらぼうに〈いいえ〉と答えた。
(何度あの笑顔に騙されたか…)
めぐみは給湯室にむかいながら呟いた。
午前の作業室。作業机いっぱいに広がる基板や数々の部品。精密ドライバーにラジオ・ペンチ、ハンダやジャンパー線。
敦はパソコンの修理中だった。
その時、ドアーがノックされると同時に開いた。
めぐみが入って来た。
視線をめぐみに向ける敦。
「どうした?」
めぐみは少し躊躇しながら敦に言った。
「受付からなんですけど…何か女の子が上条さんに会わせろって…」
「オレに?」
敦はめぐみの言葉に訝ぶかし気な表情を浮かべる。
「えらい剣幕で〈敦に会わせろ!〉って…何かヤッたんですか?」
めぐみが探るような目で敦を眺める。
「ふざけんな。オレは犯罪者じゃねぇぞ」
敦は立ち上がると作業室を出てエレベーターに向かった。何故かめぐみも一緒だ。
「何でオマエもついてくるんだよ?」
降るエレベーターの中で敦はめぐみに訊いた。
「別に…犯罪だったら困るなあって…」
「さっきも言ったろ!オレを信用出来ないのか!」
「日頃の上条さんを見てますからねぇ…」
めぐみはそう言うと、いたずらっぽい笑顔を敦に向けた。その笑顔に敦は呆れたのか〈勝手にしろ!〉と言ったきり黙ってしまった。
〈ポンッ〉という柔らかい音の後、敦とめぐみを乗せたエレベーターのドアーが開く。その瞬間、かん高い声が受付中に響いていた。
「アンタじゃ話にならないから敦を出してって先刻から言ってるのが分からないの!」
そこでは中、高生くらいの女の子が守衛との押し問答を繰り広げていた。
後に束ねた髪。ショート・スリーブの白いブラウスにヒザ上の赤いハーフ・パンツ。
それは沙那だった。
「やっぱり出会い系サイトなんかで…」
めぐみが敦に言った。
「バカ…」
苦い顔を浮かべて敦はその場に近寄ると声を荒げた。