飃の啼く…第11章-7
「だが…危機に瀕しているのはこの村だけでは無いのだ…あの雪娘め、勝手なことを言ってくれる。」
飃には、彼自身が「仕事」と呼ぶ得体の知れない用事や、武蔵の狗族を統括するという大事な役割がある。私の家には最近、私たちの活躍―といっていいのかどうか―を聞きつけ、助けを求めてやってくる妖怪が後を絶たない。今回もその一つだと思って気軽に引き受けてしまったのだが。
「………」
「どうした?」
「わたし、少し残ってやってみる。この村のみんなのためでもあるけど…助けを求めているのは、付喪たちだけじゃないと思うんだ。」
一瞬の沈黙のあと、飃はため息をついて、しぶしぶ承諾してくれた。
「さくらはお人よ…優しいからな。」
「いいよ、お人よしで。」
思わず笑みがこぼれる。そして凍りつく。
「…ねえ?」
「ん?」
「本気じゃないよね?」
「…己はいつだって本気だとも。」
飃の吐く息が、白くなってしばらく空中にとどまる。
「だって、し、死んじゃう!」
鳥肌が立っているのは、寒さのせいばかりではない。でも、この極寒のあばら家でこんなことしなくても…!
「暖めてやるから。」
そういうと、さっき脱がせたコートを床に敷いて、私を横にした。私はガッチガチに凍えながら、信じられない思いで飃を見ていた。もはや言葉も出ない。
すると、飃が、体中に獣の毛皮をまとった。彼の仮の姿である、狼の毛皮だ。顔もにわかに狼のようで…こんな例えは変だけど、小さい頃遊んだシルバニアファミリーのお人形のようだった。
なんて便利な…!感嘆のまなざしで見つめる私に、彼は覆いかぶさってきた。
「ふわ…あったか…」
だろ?とでもいうように、眉を上げる。でも、肌に直接当たる毛皮はくすぐったくて、なんだか…
「おや?」
飃が、私の胸の辺りをみて面白そうに言う。
「これは寒いからなのか?それとも…?」
そして、舐める。
「ん…っ…」
ざらざらした舌に擦られて、一気に身体が火照ってしまう。そのまま、執拗に胸を攻められる。舌で転がしたり、口に含んだり…。
「あん…っ…」
その度にあえぐ私を、上目遣いに飃が覗く。