投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 119 飃(つむじ)の啼く…… 121 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

飃の啼く…第11章-6

「そりゃあ、あんたらは強いし。長がいなくちゃ村はばらばらになっちゃうだろ。」

当たり前じゃん。と、氷雨は言う。

「あなたはこの村の人じゃないの?あなたじゃ治められないの?」

私が聞くと、氷雨はハハ、と自嘲的に笑った。

「あたしが?出来ると思う?みんなにお嬢、お嬢って甘やかされてさ、母さんならともかく、何にもわかんない私に誰が着いてくるってのよ。」

「お母さんは…?」

おずおずと、私が尋ねる。

「死んだよ。馬鹿でかい澱みに一人で立ち向かってさ。」

冷たい声だった。言葉そのものをも凍りつかせるような声。そんなに悲しい目をしているのに。

氷雨は急に立ち上がった。

「そもそも、あたしこういう事、苦手なんだよね。みんなのために自分を犠牲にする、とか。冗談じゃないって感じ。油良からあんたたちの話を聞いて、じゃあ頼んじゃおっかなって思ったわけ。」

飃ががばっとひざ立ちになる。わたしは目でそれを制して、家から出て行こうとする氷雨を、言葉で追った。

「あなた、それでいいの?」

氷雨は一瞬立ち止まった。

「あんた、あたしの話聞いてなかったの?」

振り返らずに、そのまま消えていった。



「し、し、しかた、ないいい、よ」

日が暮れるにつれて、殺人的に寒くなってゆく。歯の根が合わないので、まじめな話をしていてもこの有様だ。

「だが、己たちには己たちの生活や仕事や、戦いがある。」

家の中だというのに暖房が無いので、外と大して代わらない。それでも、ここが一番家っぽかったのだ。他の家は、山火事でもあったのだろう、ほとんど火事で焼け崩れていたから。

おまけに、普通の服でこんな雪だらけの場所へ来たものだから、全てびしょ濡れに濡れて、凍ってしまいそうだ。

「ででで…でも、それじゃ、ここの人たちがかわいそそそ…」

「さくら。」

雪道をスリップする車みたいに、言葉がすべり出て止まらない私を見かねて飃が言った。

「脱げ。」

「っはいぃ?」

「その服だ。脱がねば凍死してしまうぞ。」

大丈夫…とは言えない。

「うう…。」

軽くぱりぱりという音がする服を剥ぎ取って、部屋の隅に捨てた。炎が無いから乾かせないし。

「ぅうぅぅう…。」

壊れた機械のようにうめき続ける私を見かねた飃が、足の間に私を招きいれ、身体で包んでくれた。少しは寒さが和らいだ。


飃(つむじ)の啼く……の最初へ 飃(つむじ)の啼く…… 119 飃(つむじ)の啼く…… 121 飃(つむじ)の啼く……の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前