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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第11章-16

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「ハァ…ハァ…!」

「愚かなやつだ、澱みと取引だと?!」

怒りの矛先がさざまら無い飃が、息も絶え絶えの氷雨に吐き捨てる。

「人間は…?」

「まだあの腕の中だ!お前を優先しろというからそうした…まったく!」

腹を立てる相手が多すぎて、飃が珍しく声を荒げる。縛の呪は、そう何度も連続して使えない。さくらだけを助けるつもりだったのに、よりによって騒ぎの張本人を助ける自分にも腹が立っていた。

「妻が死んだら、お前も殺すぞ!」

獣じみた目には、冗談のかけらも無い。本気でこの狗族は自分を殺すだろうと、直感的に氷雨は感じた。そして、油良の言っていたことが正しかったことを、ようやく理解した。

「死なせないよ…。」

「お嬢…。」

よろめきながら立ち上がった氷雨を、村のものが支える。その支えを、氷雨は手を振って断った。助けを拒否したのではない。そうしなければ、仲間の命まで奪ってしまうから。

「死なせるわけには行かない…あたし…謝らなきゃ…」

そして、目を閉じ、絶対零度の結界を展開した。



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不意に吹き出した猛烈な吹雪が、炎の熱を奪い、新鮮な空気を運んできた。風の冷たさに、手放しかけていた意識が戻ってきた。



「ひ、さ…!?」

「人間!あたしがこいつを凍らせる。」

白い嵐の中から、氷雨の声が聞こえてくる。

「こいつはそうしないと刺せない!いいか、だけどもし――」

吹雪に当てられても、澱みはなかなか凍らない。空中にとどまって吹雪を呼ぶ氷雨に向かって、ゆっくりと触手が伸びる。

「その前にあたしがこいつに捕まったら、今度はためらわずに……あたしを見捨てて、こいつを殺せ!!」

澱みの身体の表面に霜が降りる。黒い身体は、うっすらと白いものに覆われてゆく。

飃の一閃が、私を熱と臭気の呪縛から解放した。お叱りは後でうけるとしよう。今は必死に空気を吸い込んで、九重をしっかりと握る。

「クソぁあ!一体どこにそんな力を…!!」

いまや澱みは、村中に伸ばしていた触手をすべて戻して、氷雨を捕らえるために力を終結させている。氷雨の吹雪に押し戻されながらも着実に、腕は氷雨に向かって伸びる。

このままじゃぁ…



唐突に氷雨が、ふっ、と吹雪を止めた。


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