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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第11章-14

頭の中をぐるぐる回る疑問に、戦闘の勘まで鈍らされないように、頭を一振りする。しかし一突きし、払い、裂く。どれを試しても、傷どころか痕さえつかない。飃の警告を無視して集まった、勇気ある付喪たちも、この異様な姿に足がすくんでいるようだ。

澱みは、その身体からずるずると触手を伸ばして、根のように村中に伸ばそうとする。飃は、北斗の結界をなるべく広範囲に広げるけど、すぐに隙間を突かれてしまう。異空間へのゲートを開いても、地面にべったり張り付いているこいつには効果が無かった。

私も、できる限りのことをするが、液体の体が相手では太刀打ちできない…その上、あの液体に触れられれば、ずるずると身体を上って来られ、沖縄のときのように、澱みの体内に取り込まれてしまう危険性があった。



「おい、娘…。」

澱みが私に話しかける。

「“交換条件”という奴をやろう。」

反対側に居る飃が声を張り上げる。

「さくら!取り合うな!!」



「ふふん?では取り合わざるをえないように、してやろう。」

その時…澱みが長い触角を伸ばして、電線に巻きつけた。嫌な予感がする。



それは、木で出来た電柱が空に掲げた、紛れもない導火線。

バチッ!という凄まじい音と共に、閃光が目を焼いた。火花が澱みの体に触れた瞬間…あの匂いの正体がわかった。

―ガソリンだ。



「な…!?」

澱みの腕の中で、氷雨が悲痛な声を上げる。

「どうするう?早くしないとこの女が解けるぞお…」

「お嬢!!」

今まで姿を見せなかった朔の悲鳴が胸をえぐった。

「こいつ!お嬢を放せ!放せ!!」

静止する付喪たちを振り切る勢いでよどみに突っ込んでいこうとする朔…このままでは、朔があの炎の中に突っ込んでいってしまう。

「解ったわよ!条件は!」

飃の歯軋りがここまで聞こえてきそうだ。ごめん、でも…誰かの悲鳴を聞いたら、何とかしてやりたいと思うのが…

「人間。これだから人間は扱いやすくていいねえ…。」

満足げな声の澱み。早くも氷雨は腕の中でぐったりしている。

「早く交換条件を言いな!うすのろ!」

炎に包まれた顔が悦にいった表情になる。

「もちろん、お前さ…お前を御方の元へ連れてゆく…。」

「さくら…よせ…!」

飃の声色は、命令でも進言でもなく、懇願だった。でも。でも…!


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