帰らざる日々-6
ー翌朝ー
夜来の雨はすっかり止み、朝日が顔を覗かせていた。
「じゃあ、姉さん」
和哉は服を着て、玄関ドアーの前に立っていた。
「姉さんは今から帰るんだろ。オレも夜までには帰るよ」
そう言ってドアーを開けようとすると、
「待って」
「エッ?」
「エリが曲がってるわよ」
亜紀は和哉の服を直すと、頬を撫でた。そして、和哉に抱きつくとキスをした。
長いキスだった。まるで恋人同士のような。
「姉さん…?」
ようやく互いの唇が離れた時、和哉が訊いた。
「これでお別れよ…和哉…」
そう言った亜紀の目には涙が溢れていた。
「ああ…亜紀、さよなら」
和哉はそう言うとドアーを開けて出て行った。
お互いを想いながらの10年が、ようやく終わりを告げた。
「帰らざる日々」完