ヒトナツ@-6
お姉さん=渚
うん、ムリ。
やっぱり把握できない。
あの渚がこんな綺麗なお姉さんに変貌しているとは。
アメリカすげえ。
というか、同い年じゃん。
年上かと思って敬語使いまくりだったし。
それにしても渚のやつ、天然か?
俺と同じ公式が出るだろう、普通。
まだ睨んでるし。
「……俺が健吾だよ」
俺は気まずいながらも、ドカッとその場に座る。
冷房の効いた部屋はとても気持ちがいい。
「……」
「あらあら!あなたたち、もう会ってるの!?これは運命ね!」
すまんババア、空気を読んでくれ。
「……じゃあオバサンは邪魔だから、夕飯のお買い物にでも行ってくるわね」
ババアはオホホと笑いながら出ていった。
さすがに状況を理解したようだ。
「……」
「……まさかあなたが健吾だったなんて」
「俺も、あのお姉さんが渚だなんてな」
「よく考えたら、健吾は昔のままだわ」
「……渚は変わりすぎだよ」
「……そうね」
うーん、気まずい。
「あ」
本屋の袋から雑誌が飛び出した。
「健吾もそんな雑誌読むんだ」
「まあな」
「彼女いるの?」
「まあな」
「うっそ!」
お姉さ…渚はひどく驚いて身を乗り出してきた。
「な、なんだよ、いちゃ悪いかよ」
「……」
なぜだか押し黙る渚。
「……関係ねえじゃん」
パラパラと雑誌を捲り、目を合わせずに言った。
「関係……あるわよ!」
「……は?っ!」
なんなんだろう。
なぜこのような状況に陥っているのだろうか。
俺と渚の口がぶつかって…
キスか、そうかこれはキスか。
女の唇って柔らかいな。
んー、マイルド。
って
「おおおおおい!!!」
忘れられない一夏が、幕を開けた。