jam! 第3話 『その日、僕の世界が少し変わったこと』-4
キュオオオォォッ!!
おそらく黒獣の声であろうそれは、そいつの最後の言葉となった。
「終わりだ」
二階堂さんは返す刀で黒獣を、両断した。黒獣はその形を崩して霧のようになり、やがてそれも薄れて消えた。
「『死界』……解除」
悠梨ちゃんの声がした。
そして、灰色の世界に色が戻った。
……いつも通りの世界が、そこにあった。
▼▼
僕等は、また探偵事務所に戻ってきた。
「これにて一件落着、っと」
「ホントにありがとうございました!助かりました」
「さてと……じゃ、リショー君」
「はい?なんですか?」
「依頼料。出しな」
「あ……」
そういえば、ここは探偵事務所だ。当然依頼料だって生じるだろう。
「あ、あのー……、おいくらですか……?」
「そうだな……今回は俺達も命張ったしなぁ…」
二階堂さんはしばらく顎に手を当てて考え、
「…二十万でどうダふッ!?」
ベシャッ、と後ろから悠梨ちゃんにお盆で殴られた。
「何回も囮役をさせといて何ふんだくろうとしてんですか!みっともない!」
「悠梨…いつも思うんだが、ツッコミにも加減が必要だと思うぞ……?」
「だいたい今回のは念魔がらみの大きな仕事だったんだから、組織からちゃんと報酬が入るでしょう?」
「仕方ねぇ、ジジイどもから絞れるだけ搾り取るか」
どうやら二十万は無しのようだ。良かった。
「報酬とかあるんですか?」
「ええ。組織から霊体がらみの仕事を片付けると貰えるの。今回は結構まとまった額が入りそう♪」
へぇ。そういう仕組みになってるのか。
「…でもやっぱタダってワケにはいかねーなぁ」
「もう!秋次さん、大人げ無いですって!」
「なぁリショー君、」
ニヤリと笑って二階堂さんは言った。
「君、幽霊…見えるだろ?」
「――っ!!」
「え?そうなんですかリショー君!?」
驚いた。まさか……まさか気付く人がいるとは。
「どうして分かりました?
「ほら、『殺気を感じる』って言ってただろ?あの念魔は確かに殺気を出してはいたが…ごく僅かなレベルで、だ。それに気付いたって事は霊感が少なからずあるって事だ」
「それだけですか?」
「いや。念魔の話にしても、俺達が霊に関する仕事をしてる事にしても、普通はそう簡単に信じられるものじゃない。だが君は『そうか、そういう事もあるか』……って顔をしてた。それも理由の一つだ」
……そう。
僕には、幽霊が見える。
昔からそういう体質だったのだ。ぼんやり、なんてレベルじゃない。むしろハッキリ見えすぎて全然怖くなかったりする。
ちなみにこの体質について知っているのは、トラックの時に僕を蹴り飛ばした親友のタイキだけである。
今のところ両親にも話していない。