jam! 第2話 『その日、僕が知ってしまった事』-5
「しょうがないですね。…まぁリショー君もこのままじゃ分からないでしょうし。説明しますね」
説明してくれる気になったようだ。
…というか、君もその呼び方で呼ぶのか。別にいいんだけど。
「えーっとね、私達は一般的な探偵と違って、俗に言う『霊体』に関する仕事もやってるの」
「つーより、そっちが本業で探偵稼業はその情報収集も兼ねたついでみたいなモノだな」
「霊体っていうと…」
「さっきみたいな念魔、それに何かにとりついた憑き物、その他色々だ」
何だかんだ言って二階堂さんが説明してくれている。
「私達はね、とある場所でその為の訓練を受けてきたの」
「とある場所って?そんな組織が?」
「んー、長くなるからその事については別の機会に。それでね、さっきの『死界』はそこで習った術の一つなの」
「術?」
もうヤケだ。何でも聞いてやる。
「結界っていえばわかりやすいかな。普段見えない霊体を実体化させる空間を造りだすの」
「ついでに指定した人間以外は入らせない優れモノだ。目撃者も減らせる」
「まぁ確かにあの念魔みたいなのが見つかったら大騒ぎでしょうからね…」
「それにあの空間内で壊したものなら修復も可能なんです。……私はできませんけど」
「え?じゃあどうやって…」
「その訓練した組織に依頼するんです。修復班がいるんで。…でも結構お金かかるんで、できれば壊さずに済ませたいんです」
せちがらい世の中だ。
「なるほど。普通なら絶対信じないような話だけど……実際に見てるからなぁ。信じるしかないか」
「納得したか?それじゃ、…行くぞ」
「行くって……どこに?」
「アホ。さっきの念魔のとこに決まってるだろ。確認した以上、放っとくワケにもいかねーだろ」
「まだ遠くには行ってないみたいです。…というか、多分こちらを伺っています」
「好都合だ」
そう言うと二階堂さんは立ち上がり、壁に掛かっていた黒い棒を手にした。
……いや、違う。
棒じゃない。あれは、黒い鞘に収まった…日本刀だ。
「さってと、獣狩りといきますか。おい、リショー君」
「はい?なんです……」
呼ばれて振り返って見た二階堂さんの妙な笑顔に、僕はひしひしと嫌な予感を感じるのだった……。