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SLOW START
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SLOW START U-2

「やば!!寝坊だよ!」

8時出勤の日だった。
頭が一気にクリアになって勢いよく立ち上がった。


…化粧…とかしてる暇ねぇよ!!とりあえず着替え!
今までの記録を大幅に縮め8分で準備を済ませた。ワンルームを走り回り携帯と鞄を持って玄関に向かった。



8時30分
「はぁはぁはぁ〜あ」

…やっぱり久々ダッシュはきついわぁ


自分のデスクに突っ伏して呼吸を整えた。

バコン!!

「痛っ!」

頭を思い切り叩かれた。
後ろを見た。

「田山先輩〜!」

「てめぇ〜何遅刻してんだよ?」


あたしを叩きやがった犯人は3年先輩の田山拳(たやまけん)だ。

「何もその分厚いファイルでぶたなくても〜」

田山先輩は仕事用の幅5センチはあるファイルで頭のてっぺんを思い切り叩いたのだ。

田山先輩は元高校球児で今も会社の草野球チームに所属しているバリバリの体育会系だ。何故だか、あたしを気に入っていてよく飲みに連れ回す。先輩にとってあたしは舎弟のような感じだと思う。

「そんなに強く叩いてねぇだろ」

「…先輩、加減って言葉とか知らないですよね?」

「は〜ん。遅刻したやつが何言ってんだよ。今日は10時からの会議で使う資料俺一人でまとめたんだけどなぁ〜」

ハッとした。今日の早出は田山先輩と資料を作るためだったことを思い出す。

…そうだった…やっちゃったよ


田山先輩は、まぁいいやと言うとあたしの頭を軽く撫で資料を運ぶように指示した。

「…遅刻してすいませんでした。即行運びます。」

「第二会議室な」


早速資料を持ちエレベーターホールに向かった。

いつも厳しい田山先輩だがたまに見せる優しさがある。入社したての頃はそんな所にちょっと惹かれていた。

でもその時、先輩には彼女がいた。取引先の受付嬢で周りの同僚からよく羨ましがられていたのを覚えている。綺麗な人だった。
あたしは、先輩と後輩という関係で十分だといつもの悪い癖が出て告白すらしなかった。


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