投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「ずーっと一緒」
【ホラー その他小説】

「ずーっと一緒」の最初へ 「ずーっと一緒」 3 「ずーっと一緒」 5 「ずーっと一緒」の最後へ

「ずーっと一緒」-4

あの神谷の親友たちは帰り、僕は1つの部屋に通された。そこは線香の臭いが充満していて、ちょっと臭かった。
「あれが穂奈美よ」
美花子おばさんが指差す方向に、神谷はいた。
白い布が被せられた長方形上の段の上に、位牌と大きな写真立て、線香があった。写真立ての中の神谷は、凄く笑っていた。
とりあえず、僕は線香をあげる事にした。
軽く目を閉じる。こうしてると、昨晩の事が思い出されるが、そこは無視を……
(目、閉じちゃ駄目だよ……って、言ったのに)
出来なかった。
僕は目を開け、立ち上がり、辺りを見回した。美花子おばさんが怪訝な顔をしているのも構わずに。
「神谷……いるのか?」
軽く問い掛けたが、返事はない。
空耳だったのか?
「あの……かなめ君、穂奈美が見えるの?」
「へ?」
美花子おばさんが変な事を訊いて来るもんだから、思わずすっ頓狂な声をあげてしまった。
「穂奈美の霊が、見えるの?」
美花子おばさんは尚も訊いて来る。
「いや……さっき、声が聞こえたような気がして……。でも、空耳かもしれません」
「そう……」
美花子おばさんはひどく落胆した様子だった。霊でもいいから、一目でもいいから逢いたかったのだろう。僕にはそれが、ひしひしと伝わった。
「美花子おばさん……」
「あ、そうだ。これを渡しておかないとね……」
そう言って、美花子おばさんは一通の封筒を取り出した。可愛らしいピンクのその封筒を、僕は受け取った。
受取人の名前は僕。『かなめ君へ』と書かれている。 差出人は『神谷穂奈美』と書かれていた。
「穂奈美からあなたへの手紙よ。あの子の机の中に入ってたの。安心して。中身を覗くなんて野暮な事、してないから」
「そうですか……」
僕は封筒を開こうとした。だが、美花子おばさんが必死になって止めた。理由を訊けば、
「それはあなたにだけ向けられた手紙なんだから、他の人が読むなんて事、しちゃいけないと思うの。ここで読んだら、私も見たくなっちゃうから」
だそうだ。
僕は一礼して神谷家から去り、誰にも見られないような場所に向かった。そこは秘密の場所とも言える、子どもの頃に神谷と一緒に見つけた、夕陽の絶景ポイントだった。そこに行くには、草むらを掻き分け、草むらを掻き分け、草むらを掻き分けると到着出来る。今日は昼間だから、残念ながら夕陽は見られない。
さて、手紙を読むか。



かなめ君へ
あのね、あなたがこの手紙を読んでる時、私は死んでる……なんて事は書かないからね。あ、今書いてるじゃないか、って思ったでしょ?まあ 、言いたい事はただ1つ。私はもうすぐ死ぬ。ていうか、この手紙をあなたが読んでる時点で、既に死んでる。だからさ、最後にやりたい事があるんだ。手紙で言う事ではないので、直接逢いに行くね。だから、葬式にも来させない!訃報はお届けしませ〜ん!でも、その時は引かないでね。きっと凄いグロテスクだと思うんだ。じゃ、その時までね。
穂奈美より



訊けば神谷は、もともと病弱だった。いや、それは知っていたが。なんにしろ、その日は病院に行く日だったそうだ。その途中、事故死……。
私が死んだら、かなめは葬式に呼ばないでね、とあらかじめ美花子おばさんに言ってあったようだ。
この手紙を書いたのは、おそらく自らの死期を予測していたからだろう。だけどそれは事故死じゃなく、病死だった。
「神谷……」
家で異変が起こり始めたのと、神谷が死んだ時期は、ピッタリ一致する。あれは神谷だったのか。昨晩のあれも、きっと伝えたいなにかを伝えようとしたんだろう。
「やりたい事って、なんだよ……」
どれだけ考えても答えは出ない。
一体、お前はなにを伝えたかったんだ?


「ずーっと一緒」の最初へ 「ずーっと一緒」 3 「ずーっと一緒」 5 「ずーっと一緒」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前