さぁ満月だぞ!Act.1-1
『トラウ゛ォルタは好きですかっ!?』
私より年下であろう学ラン姿の男の子…
いや訂正。
男の子なんて言葉可愛い過ぎる。
何かぴったりな言葉…そう…
学ラン男子だ。
部活で焼けたであろう肌。ガッチリした体。
顔は悪くないと思う。
犬みたいな目をしてる
スポーツ大好き爽やか体育会系。
はぁ…?
なんだこのガキは?
口には出さずいつもの接客スマイルで
『サタデーナイトフィーバーに出てる人ですか?』
『いや炎のメモリアルに出てるトラウ゛ォルタですっ!』
いや、同一人物だから。
つかジェネレーションギャップでサタデーナイトフィーバーを知らないのか?
『俺トラウ゛ォルタみたいな男になりたいんですっ!』
はぁ…だからなんなんでしょう?
君は十分暑苦しいのに更に暑苦しくなりたいのか?
てかトラウ゛ォルタってホモじゃなかったけ?
『ジョン・トラウ゛ォルタ関連の商品をお探しですか?』
口調は変わらずにこやかに言った。
ここはビデオ屋ですから。
ありますよ。
キャリーもサタデーナイトフィーバーも炎のメモリアルも。
『今お持ちしますね』
早く解放されたいので事を早く片付ける事にした。
ここは片田舎にある全国チェーンのビデオ屋。
良く変な客は来る。
これくらい軽くあしらうのは慣れている。
『あの!違うんですっ!あのっ………っこれ!』
小さくたたまれた紙をレジの上に置いて彼は一目散に出口へ走っていった。
周りの従業員も客も私に視線を注ぐ。
視線が痛い。
興味がないので今すぐ捨てても良いのだが周りが見ている。
かといってポケットにしまうのも…
とりあえずその場に放置しておいた。
メモを忘れバイトを終えた私は休憩室で煙草を吹かしていた。
すると
『妃さぁ〜ん』
このアニメ声は伊藤だ。
伊藤は私のひとつ下の女子大生だ。
伊藤は白くて細い。
重い荷物もってりゃ女の私が代わりに持ってやるぐらい可愛い女の子だ。
それに比べ私は…細いとは言えない。
原因は厚い胸板。
胸板が厚いとふくよかに見える。
胸がでかいんじゃない。
アンダーバストが厚いのである。
しかも手なんか真っ黒だし。
溜め息が出る。