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飃(つむじ)の啼く……
【ファンタジー 官能小説】

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飃の啼く…第10章-1

「情け無いことだな…」

宝石の海のような東京の夜景を見下ろしながら、低い声でそいつは言った。



この町で一番高い高層ビルの、一番上の部屋。普通の人間が住むのならば、そこには上等で、洗練された家具が並ぶはずだ。



けれど、そこには何も無かった。

テーブルと、ソファが中央においてある以外には。

そしてそのソファには今、4つの人影が腰を下ろしている。

「…これで、子供たちの捕食が難しくなった。」

飃の捕獲〜逃走劇から数日後、何者かによって破壊された地下の牢獄。澱みたちが容易く妖怪どもの生気を得るのに都合のよかったあの牢獄が何者かによって破壊された。

「まだ青嵐の居場所を見つけられないのか…次はいずこを破壊されることやら。」

黷の声には批難と叱責と失望が織り込まれている。もっとも、この者の心の中にあるものといえば、それと似たような感情のみであったが。



「は…しかし、われらの計画は着々と進んでいます。」

白いスーツの男が申し出た。澱みに魂を売り渡し、代わりに不死の肉体を得た人間。右目の傷跡が笑みに歪む。



「そう…やつらの精神は脆い…あのような弱き者に望みを託すとは、狗族どももとうとう万策尽きた、と言うところだろう。」

その隣にいた男は、獄の言葉を受けて言った。腰から、紐にくくりつけられた幾つもの小さな瓶をぶら下げている。その中には、沢山の種類の、沢山の虫。右目に、蜘蛛のような形の刺青を施している。

「蚩(おろか)さーん、そういうあんたがあの鎌ねずみに虫を奪われたんでしょーが。」

一番端の若い男が口を挟む。

「それではぜひとも拝見させてもらいたいね、擾(みだす)。鎌ねずみのような雑魚相手に真っ二つにされかけた君の手並みを、な。」

へっへっへ、と、擾は嗤う。瞳のないその目は、暗闇で不気味に光る。

「いいんすかァ?オレが本気で出たら兄さんたちのお楽しみ、もうなくなっちゃいますけどォ?」

「図に乗るな。擾。」

最後の一人が、静かに言う。暗がりの中で身じろぎすると、幽かな光を眼鏡が反射し、きらりと光る。ぼんやりと浮かび上がる金の髪、金の耳。紛れもない狗族だ。

「お〜怖っ!狐の兄さん、そういうあんたはどうも灰色だけどなァ。」

いかにもわざとらしい口調で擾が言う。

「・・・何が言いたい。」

にやりと、擾が笑う。


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