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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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ICHIZU…E-2

「だってさ!これだけの野球部員をいっぺんに集まる事って無いじゃない」

「開会式だからな」

やや興奮気味に答える佳代に、直也は納得したように頷いた。
佳代はまた座り込むと、感慨深げに言った。

「こんなところで野球やるのってジュニアの地区大会以来だよ」

その言葉を聞いた直也は苦笑いしながら、

「オマエ、イヤな事を思い出させるな」

ジュニア時代、佳代と直也は同じ町内でライバル・チーム同士だった。
地区大会に選抜されるための町内11チームによるリーグ戦で、佳代のチームと直也のチームが同じ勝率で並び、チーム同士の決勝戦を行った。
その時、直也が先発で投げたのだが、コントロールが定まらずに死・四球の連発で、ヒット1本に抑えたにも関わらず試合には破れたのだった。

(それが2年後にゃ同じチームで開会式を待ってるか…)

感慨深かげに微笑む直也。

「カヨちゃん!」

突然、カン高い声が佳代に向けられる。見れば相田有理が先生や生徒会のメンバーを連なって部員の元に駆け寄って来た。

「ユリちゃん!」

佳代は立ち上がって有理の手を取ると、ニッコリ笑って出迎える。

「いよいよね!観客席から応援してるから」

「ありがとう!」

そう言った佳代は視線を直也に移す。直也はソッポを向いていた。
この時、佳代は何かを思いつき、有理に耳打ちした。それを聞いた有理は快く承諾して直也を呼んだ。

「川口君…」

直也の顔を覗き込むようにして声をかける有理。呼ばれた直也は〈何?〉と言いながら素早く彼女に顔を向ける。要するにソッポを向きながらも耳は聞いていたのだ。

「帽子の裏に書かせてくれる?」

そう言った有理の手にはマジックが握られていた。

「エッ!書いてくれるの」

直也のは嬉しさと驚きが入り混じった表情を浮かべて、素早く帽子を脱ぐと有理に渡した。

野球をやっているほとんどの者は帽子のツバの裏に思い々の言葉を書く。試合の要所々でその言葉を見て精神を落ち着かせ、プレッシャーに負けそうになる己を鼓舞したりするのだ。

受け取った有理はしゃがみ込むと、帽子をヒザに乗せてマジックを走らせた。

「これで良いかしら?」

「ありがとう」

帽子を受け取る直也。そこには〈弱気は最大の敵!!〉と書かれていた。
帽子を見つめている直也に有理が説明する。


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