愛した人は一人だけ。-6
「恵、恵、もう大丈夫だからな。」
優は上着を恵に着させる。
優は持っているハンカチで、体中についた、奴らの唾液などを拭き取った。
「恵………」
優は恵を抱きしめた。
涙が止まらない。
「…………優。」
恵も安心したように、泣き出す。
「ありがとう、ありがとう……」
何度も何度もお礼を言って。
その時。
「くそったれ。」
Aが切れたように、ナイフを取り出した。
「優、横!横!」
「うっ。」
「優、優ぅぅぅ!」
優の脇腹にナイフが刺さってる。
「まずいって、早くにげましょう。」
Cがズボンをはき、Aの腕を引っ張り、ビルから出て行った。
「うわぁぁ」
Bも追い掛けて、出て行った。
「ふーふー……うっ。」優がナイフを自分で抜いて、恵の手足を結んでいる、縄を切った。
「こ……れで、動け………る。」
優は痛みを我慢して、笑顔で恵の頭を撫でる。
手足が自由になった恵は優に抱き着いた。
「優、死んじゃいやだよ。まだ、優とHだってしてないのに。優のために処女とっといたのに……あいつらに………」
「俺も童貞だよ。め……ぐの……処女は、ごほっ………俺が………もらって……やるからよ。」
優はいつも笑顔だ。
5年前心を閉ざした時も、優は笑顔だった。
誰も話し掛けなくなった時、優だけが私に話し掛けてくれた。
「ありがとう……元気になったら……」
恵も優に応えるために笑顔を見せる。
「はぁはぁ……恵と……いれ……て幸せだっ……たよ。はぁはぁ」
優の息が荒くなってきた。
「馬鹿!何最後みたいに言ってんのよ。救急車よぶから、助かるから、それからまた……」
恵は携帯を取り出した。
【プルルルルル】
「あ、優が優がナイフで刺されて死んじゃいそうなんです。早く来てください、死んじゃうよ……………」