飃の啼く…第9章-2
「聞こえるか?」
「やぁ…ぃわなぃで…」
いやらしい音が、白昼のアパートに響く。
「ひ、ぅ…にゃ…飃、つむじぃ…」
片手を私の中に残したまま、身体は私の上に覆いかぶせて、キスで言葉をふさいだ。
「むぅ…っは…ぅ……っ!」
激しい痙攣が襲う。怖いほど真剣な飃の瞳が、私の顔をじっと見る。欲望に燃えた目。愛とは何かを知っている獣のような。私が大好きな目。
「疲れたか?」
「そういっても、止めてくれないんでしょ?」
私は、くすくす笑う。
「…まあな。」
風邪で、しかも、一度いったばかりできわめて敏感なそこに、熱いものが入ってくる。
「っは…熱いな…。燃えてるみたいだ…」
私は、朦朧とした頭で思った。
…燃えてる、かもよ…?
ゆっくりとしたテンポで動く飃が、私という楽器のあえぎ声を奏でているような。変な感覚。もう、私には飃を感じることしか出来ない。彼の息遣い、汗のにおい、舌の感覚…
「ぁぁ…つむ…じ、くる…きちゃぅよぉ…」
か細い声で、熱に浮かされたような声を出す。
「一緒に、いっしょにぃこ…」
私の両手が、空をつかんで伸びる。飃の手が、それを捕まえる。
「く…!!」
「っあ―!」
その日の絶頂は、今までで一番長かった。永遠に続くかと思われるようなホワイトアウト…。気づくと、飃が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
私の気がつくと、大きなため息をつき、私の手を両手で包んだままベッドに頭を突っ伏した。
「…面目ない…」
「ふざけすぎ…」
私の声は、もはや「かすれてハスキー」というレベルを通り越して、「かすれた囁き…」と化していた。しばらく学校を休むしかない。
「でも、気持ちよかったから許す…」布団に半分顔をうずめて、言った。飃の頭はまだ布団に突っ伏したまんまだったけど、耳だけは確かにピンと動いた。
許したげるわよ。
猫舌の私でも食べられるくらいお粥も冷めたし。
その日の夜、買い物に出かけた(いい?お金を払い終わったらすぐ出るのよ?レジの機械に見とれて立ち尽くしてちゃ駄目だからね?)飃のお留守番をしながら、うとうとしたり、はっと起きたりを繰り返していた。その日何回目かのうとうとの最中、玄関で物音がした。