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wish.the.onece.of
【ファンタジー 恋愛小説】

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wish.the.onece.of-3

洗面所に着くと歯ブラシをコンマ〇二秒でブラシが入っているコップから抜き去り、そこからコンマ〇四で歯磨き粉を垂らして、歯を磨き始めた。
歯磨きが終わると午前六時二十七分。
一度部屋に戻って、学校の制服を箪笥から取出す。
白猫と黒猫をポンポンして今度は洗面所を素通りする。
(お風呂…お風呂。お風呂♪)
朝風呂に入るらしい。
脱衣所に入り、ワイシャツを脱いだその時に気付いた。
(…下着…忘れた)
ワイシャツを着直し、部屋に下着を取りに行く。
本日三度目のポンポンを済ませて風呂場に戻る。
服を脱ぎ捨てて洗濯籠に放り投げる。
風呂から上がるとブレザーの制服をきっちり着て、部屋に靴下を取りに行く。
(また忘れた…)
靴下を履いて、ポンポンを済ますと、時計の針は六時五十分を回っていた。
勉強道具が入った鞄に携帯をマナーモードにしてから突っ込んで、家を出る。



がちゃり。
鍵を閉めた事を確認して歩き出す。
朝の住宅街は非常に静かで、足音でその静けさを消してしまうのが勿体ないくらい静けさだった。
その歩行距離、僅か10メートル程。
ポケットをまさぐり、鍵束(といっても付いてる鍵は三つだが)を取り出す。
右手にある結構立派な一軒家の扉の鍵穴にそのうちの一つを差し込む。
それを半回転させる。
回るという事は鍵自体はあっているらしい。
家の中に入って一言。
「…おきろぉぉぉおぉおぉぉぉおおぉぉおおぉぉ!!!!」
命令形である事を見ると相手がいるらしい。
その咆哮は階段を駆け上がり、扉を突き破って、相手の耳に届いた。
だが、言葉に従う気配はない。
即ち、起きた気配はない。
「…………すぅ、」
新たに力を溜めて、靴を脱ぎ、中に入る。
階段を上がりきって左にある扉を開けて七ほど前進して不機嫌な顔で口を開く。
「おきろぉぉぉおぉおぉぉぉおおぉぉおおぉぉ!!!!」
「うわッ!!!!」
若い、少年の叫び。
恐らく一度目の射撃で半分起きたところに、二度目格闘攻撃によるクリティカルヒットが決まったのだろう。
少年の頭が見事な弧を描き跳ね上がる。
枕元にいた少女が起きるなりいきなり全力で叱咤するので、驚くのも無理はない。
「ぅぉおそぉぉい!!」
いきなりの叱咤にきょとんとして、少年は尋ねる。
「……ここに居る理由を説明しろ。」
寝起きであるせいか、若干声が掠れている。
それでも少女は、しっかりと聞き取り、答えた。
「何って…起こしに来たのと、朝ご飯作りに来たのと、遅刻しなよいうに一緒に学校行こうって」
非常に鈍感な彼は、この言葉の真の意味を知らない。
というより、察せない。
これぞ真の馬鹿。
「毎日律義な奴。来なくてもいいぞ?」
だからこんな台詞が吐ける。
少女も、察してくれないから悪気は無く怒ってしまう。
「…私が来なかったら毎日遅刻だし」
『それに…』と付け加えようとしたがばつが悪くなったように言葉を胸中に納める。
「なんだよ?」
顔をしかめて疑問に思う彼を傍目に不機嫌な顔で
「それに、広島にいるおじさんに怒られるの、享[きょう]なんだからね?」
享[きょう]と呼ばれた少年はようやく立上がり、平日の朝早くにわざわざ起こしに来てくれた少女に、言った。
「……親父は長期出張だろ?なんか別居みたいな言い方するな。まぁ、確かに朝飯は香[きょう]に作ってもらわないとキツいけど。それに、遅刻になったらなった、怒られたら怒られたらで、別に気にしないし。どうせ親父は年に一回しか帰ってこないしな。」
香[きょう]は不機嫌な顔を保って言う。


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