空、泳ぐ-2
愛しさが溢れた分、切なさが心に染み込んだ。
雲のような彼の心を掴むために私は飛んだの。雲の中にいれば私は触れていられる、貴方は私を見てくれた。
いくつかの季節を共に過ごして、やがて雲は形を変えてしまった。
私の体は地上に下りた。
長い季節を一瞬に近い速さで思い出していたのだろう。空を泳ぐ雲はまだ視界の中にいる。気持ちいいくらい空は晴れていた。
そっと空に手を伸ばしてみても、もう雲を掴もうとはしなかった。瞳の中、手の向こうを流れていく。
なぜか微笑んでいた。
「そっか。」
そう呟いた意味はわからない、でも出てきた言葉。きっと素直な言葉。
彼と過ごした日々は記憶となっていく。痛みも切なさも、すべてやさしい気持ちになって生まれ変わるようだった。そんな感覚。
「ありがとう。」
いい恋だった。
また風が部屋の中に流れてくる。そっと目を閉じて身を任せてみた。
きっと明日も晴れる。