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世界の中でたたずむ、人
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あなたの えがきかた-3



出来た絵は『ピエロ』に見えた。
ピエロは麦わら帽子をかぶっていて、上着はボロボロで汚れている。 髪の毛が恐ろしく長くて、何か少し澄んでいた。
ピエロの化粧は笑っているが、ピエロの表情は哀しげに見えた。
『お辞儀をしているピエロ』の絵だった。 それは、彼に見えなくもあるが、しかし彼では無い様な気もする。また、私に見えなくも無いし、見えなくもある。
自分で言うのもなんだが、不思議な絵だった。

長い間見ていると、全く違う絵にも見える。 しかし何か根本に根座している物は同じで、それは私の『恋』と名付ける事が出来た。

「よし」と、私は一人呟いた。
準備は整ったのだ。
あと私に出来る事は一つも無い。




絵が完成した次の日、私は完成した絵を便箋に入れ封をし、彼の下駄箱の中へとソッと入れて置いた。
メッセージは何も無い。 名前すらをも書いていなかった。 何か言葉をつけると真の意味は伝わらない様な気がしたからだ。
私からの、唯一で絶対の『愛の形』。伝わらなければそれまでだし、私の負けである。しかし内心、気が気でない。
不安で人は死ねるだろうと、私は今日始めて思った。

返事が来たのは、次の日であった。




次の日はちょうど休日で、私は家にいた。何をしてもどっちつかずであったし、あまり外に出たい気分でも無かった。

10時過ぎ辺りで眼を覚まし、その後を、音楽を聞きながら過ごした。
“RADWIMPS”の三枚目のアルバムを聴き、それが終わると“スーパーカー”のベストアルバムを聴いた。 それが終わると“BUMP OF CHICKEN”のCDを片っ端からかけていき、覚えている歌を唄いまくった。
『K』を全力で叫び、『天体観測』を唄い、その他諸々を出来る限り大きな声で唄い続けた。
『スノースマイル』を2回唄い、『ハルジオン』を3回唄い、そして最後に『ロストマン』を唄って、何もかもが嫌になって唄う事を止めた。
そしてまたRADWIMPSの三枚目のアルバムをかけて、リピートで『閉じた光』を12回聴いた。
13回目が流れ始めたとどうじに大量の涙を流し、とりあえず座っていたソファーを殴った。 近くに置いてあったテレビのリモコンを思いきり投げ、リモコンがバラバラになるのを見て更に涙を流した。
しばらくは泣き続けていたと思う。傍らではCDデッキから『閉じた光』が流れ続けていた。

涙が止まると辺りは静まり帰り、例の“得も言われぬ渇望感”が私を襲った。
私は村上 春樹の『ノルウェイの森』読む事でそれを耐え、ゆっくりと眠りに落ちた。

私の眼を覚ましたのは、来客を知らせるチャイムの音であった。


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