『異邦人』-4
♀
彼は部屋に入ると、あたしの足を優しく拭き、手当てをして毛布をかけてくれる。
なんて、いい人なんだろう。でも、改めて見回すと不思議な部屋よね。なんだろ、この床……細い草が綺麗に織り込んである。あたしがキョロキョロしていると、彼が飲み物を持って戻ってきた。それは、不思議な香りがしたけど甘くて美味しかった。ふいに彼の指が頭をつつく……そうよね、部屋に入ったら帽子取らなくちゃ……
あたしが帽子を取ると、一瞬彼の瞳が大きく開いた。なんで驚いてるの?ホントはそう聞きたかった。
あぁ、なんてもどかしいんだろ……お礼を言いたいのに……聞きたい事だって沢山あるのに……
あたしがそんな事を考えていたら、彼はまた立ち上がり部屋を出て行った。しばらくすると、なんだかいい匂いがしてくる。
………グゥッ………
はぁ……なんて現金な、あたしのお腹……こんな状況なのに鳴るんだもん。恥ずかしいよぅ……
彼が食べ物を持ってきてくれても、恥ずかしくて、あたしは顔を上げる事ができなかった。でも、彼は優しく勧めてくれる。
遠慮するのはかえって失礼よね。うん!この際だから、ご馳走になろう!
あたしはスプーンで一口食べてみた。
あぁ、なんて美味しいの?ダメ!止まらないわ……
夢中になって食べていたあたしが顔を上げると、彼が笑顔で見つめていた。
あーん!ごめんなさーい!だって、だって美味しかったんだもん!あの……どうぞ……
あたしがお皿を彼の方へ差し出すと、彼は更に優しい顔になってお皿を押し返してくれた。
全部食べていいの?
きっとあたしはそんな顔をしてたんだと思う。こんな時って何も言わなくても通じちゃうんだ……彼は笑いながら頷いていた。
結局……不本意(?)ながら、あたしは残すことなく、平らげてしまった。ホントに美味しかったのよ?残すなんて勿体ないことできないもん!言葉で言えないから、せめて仕草で彼にお礼をする。
ご馳走さま……美味しかったです。
彼は食器を片付けると、あたしの顔を見つめて自分を指差しながら、ゆっくりと喋った。
「%§▲&……ヒィ…カァ…ルゥ…☆¥&?」
それが、貴男(あなた)の名前なの?あたしは彼の名を呼んでみた。
「…ひ…か…る?」
彼は嬉しそうに微笑んで頷いた。そうかぁ……貴男、ひかるって言うのね?素敵な名前……彼は自分を差していた指を、あたしに向ける。うん!あたしも言わなくちゃ!
「始めまして、あたし…ルーンっていいます。助けてくれてありがとう」
「…ルーン?…」
彼が、あたしの名を呼ぶ。なんか恥ずかしかったけどあたしは頷いた。
「……ルーン……★¥&%ルーン…※¥☆」
優しい笑顔で何度も呼んでくれた。あたしも彼の名前を言ってみる。
「……ひかる……ひかる……」