幸せな子守歌の様に-5
「……うん」
「どんな夢だったか聞いてもいい?」
どうして悠がそんなことを聞くのかわからなかった。
「昔の夢よ、悲しい…夢」
別れてから何度か夢に見た。最近は見ることも思い出すこともなかったのに。
悠の指が私の髪をすく。
「悲しい…夢?」
悠がすごく真面目な顔して聞くもんだから、拒む事も出来ずに私はそのまま、過去の話をした。
同棲してたこと。
結婚の約束。
私の仕事への思いと、彼との考え方の違い。
そして。
二股をかけられた挙句、別れたことも…。
隠す様な事でもないけど。
でも。
もし悠が離れて行ってしまったらどうしようと、鼓動は速まる一方だった。
話終えると、悠は大きく息を吐いて。
「奏子はオレと出逢うのが遅いんだよ」
…え?
何を言われるか緊張していた私は一瞬思考回路が止まる。
「もっと早く出逢ってれば良かったって事!」
固まってる私に言い放つ。
「もっと早くって…、私が大学生の頃、悠は中学生じゃないの!」
「ははっ!確かに。っていうか、そう考えると怖いな〜!」
悠が無邪気に笑う。
まったく、怖いのはこっちよ!
「奏子の事信じてなかったわけじゃないよ。だけどうなされながら男の名前呼んでたら心配するじゃん」
…男の名前!?
「え、寝言言ってたの?」
「ん。オレちょっとだけうろたえた。これが起こせなかった理由」
「そうだったんだ…、ごめん」
あの時、悠の表情がなんとなく暗く感じたのはこれだったんだ。
「もしかして…、さっきしてる最中におかしい感じがしたのもそのせい?」
「あれ、バレた?…いつも通りにしたつもりなんだけど、なんとなく男の影がうろついて悶々と…。まぁ、少しショックだったけど、今はオレ一筋ってわかってるから」
自信ありげに言いきる。
「……凄い自信ね」
「オレの知ってる奏子はそんなに器用じゃないから」
にっと悠が笑う。
当たってはいるけど。
…からかわれてるのかしら、私。
悠が私の頭をわしわし撫でる。
「好きだよ、奏子」
目の前に満面の笑み。
カァッと顔が熱くなる。
暗くて良かった。
きっと今凄く赤くなってるんだろう。
頬を両手で押さえながら、悠の腕の中に滑り込む。
でも、勘のいい悠だからきっとバレてるんだろうけどね。