飃の啼く…第7章-13
すると、そいつは
「さくらや、とうさんは悲しい…お前が…」
―やめろ
「さくらちゃん?どうしてあんな怖い人と一緒に居るの?母さんと一緒に帰ろう?」
――やめろ…
次の瞬間、そこには飃が……
「さくら・・・愛してる」
「やめろおおぉぉ!!!!」
そいつは、飃の顔をしたまま、九重に地面に釘付けられていた。
「ケ…ヘヘ…ェ…非道い女だなぁ…お前…」
「何故狗族を裏切った、狐よ。お前は野狐とは違う、れっきとした金狐だろう。」
飃が、地面から抜き取った七星を自分の姿を模した狐の首にあてて言った。
「そりゃあ、形勢を見たのさぁ。決まってる…今だって、愚かな狗どもはあの御方に滅ぼされようとしているだろぉ…」
「…どういうこと…?」
悪寒が走る。
「お前らが来るのを…待っていたんだよお…あの村で…御方は御名と肉体を手にお入れになる……が!」
七星は、ほとんど狐の首に食い込んでいる。
「あいつらは最後まで信じてやがっただろうねえ……お前が助けに…戻ってくるって……」
狐は事切れた。
「飃、行って!私はこの祠の中の巣を破壊する!」
彼は、うなずくと、それこそ疾風のように山を駆け下りた。
祠の結界は、狐が死んだのと同時に失われていた。その中の棲家を破壊すると、奴らが塵になって消える時の『ザア』という音がここまで聞こえた。
私が村にたどり着くとそこはほとんど……ほとんど、焼き払われていた。