飃の啼く…第7章-12
――恐怖。
「だ、だめ…そんなこと、させない…」
「カカカカ!ならばどうするぅ!?貴様など、両手を失っていても殺してやれるわ!!」
ひざを折ってうずくまる私を、奴は容赦なく切りつける。反撃したいけど、体が自然と、子宮を守ってしまう。
そして、目の前に奴が現れた。狐の姿をしている。腕があるはずのところに、くくりつけられた、刀が2本――
狐は笑った。
「やめ…!」
その時…辺りを覆っていた硫黄の煙が晴れた。飃の盾が、煙を吸い込んでいる。
今や彼の北斗は、円盤状の丸い形ではなかった。縦に長い長方形の形に進化した北斗は、宇宙の漆黒の輝きを失うことなく、そこにある。
ざく、と音がする。
「ぎぃ…!」
狐の尾を、飃の放った七星が貫いていた。
「こんな鉄くずで、われを滅することは出来ぬわ!」
狐は、口でくわえて尻尾から剣を引き抜こうとした。だが、飃が七星に念を込め
『切!』
と唱える。すると、七星のすべての宝石が光って、さらに深く尾に食い込んだ。
女狐は地面に縫いとめられて動けない。
「きいいい!小賢しい真似を…!」
自分の尾を食いちぎって逃れようとするけれど、両手が刀になっているので体勢を立て直すのに手間取っている。
「さくら!なにをしている!」
「あ…ごめ…」
私は九重を構えた。
その一瞬だ。
「…さくらちゃん…何をしてるの…?」
そいつは、人の心の最も奥底にある記憶をさらった。
「お・・・かあ・・・さ・・・」
「どうしたの?そんな怖い顔をして…」
うそだ。これはこいつの作り出した幻想だ。母さんの手は血にまみれた刀なんかじゃない。